マルチタスク、優先順位決めが苦手

事例(3)着手した仕事が締め切りまでに終わらない

締め切りを忘れているわけではなく、早めに取り掛かっているにもかかわらず、決められた日までに仕事を終わらせることができない。例えば、10ページの資料を作成する場合、期日の前日になっても、最初の3ページ分は完璧に仕上がっているけれども、残り7ページは手つかずの状態……となってしまうのです。仕事に熱心に取り組むものの「丁寧過ぎて遅い」ために、決められた期日に間に合わなくなるのです。

発達障害の人は、複数のことを同時並行で進めたりというマルチタスクが苦手だったり、手順や完成度に対するこだわりが強い人が多いようです。自分のやり方を見つけたら、どんなに周りに言われても変えずに貫こうとする傾向があります。

全体を見通す力が弱く、どこでどの程度手を抜いたらよいかという判断をするのも苦手です。このため、仕事を任せるときには、上司がそこを支援する必要があります。

「8月31日までに企画書を作るように」という指示だけだと、「前日になっても全体の1割しかできていない」ということが起きてしまいます。ですから、仕事をできるだけ細分化し、細かい期日を設定してチェックポイントをたくさん作ります。

「8月末までに企画書を作成する」という仕事なら、「8月10日までに今の課題や目的、コンセプトを作成する」「8月20日までに効果や予算、スケジュールを作る」「8月31日までに具体的な進め方を決める」と細分化するわけです。その時には、作業の全体像が見えるように、業務のフローチャートやテンプレートをつくってあげるとよいでしょう。

事例(4)緊急の重要な仕事が入っても、今やっていることを優先してしまう

緊急の重要な仕事が入っても、仕事の優先順位を入れ替えられず、今やっている仕事をそのまま続けてしまう。そのため、顧客を怒らせてしまったり、ほかの人に迷惑をかけたりすることになってしまいます。

発達障害の人は、急な方向転換が苦手なことが多いためです。全体を見たうえで、どれを先にやるべきかという優先順位をつけるのが苦手なうえ、自分のルーティンやこだわりを崩すことにも抵抗感が強いのです。

ですから、指示をするときには、「前に頼んだAやBよりもこちらの方が急ぎなので、優先して取り組んで」など、優先順位もあわせて伝えるようにしましょう。また、細かい依頼でも、普段から「火曜日の3時までにこれをやってね」など、締め切りの日時を伝えます。メールの返信も、相手任せにするのではなく「明日の午後3時までに教えてください」などと一言添えるようにすると、仕事の優先順位を理解しやすくなるはずです。