男性部下が突然の激昂

私のところに寄せられる職場のトラブルのなかには、根底に女性蔑視がある、と感じるものもあります。

ある企業で、女性管理職第1号となったAさんの例をご紹介しましょう。Aさんが部長に就任してまもなくのことです。部下の男性Bさんに急ぎで確認したいことがあって携帯電話を鳴らしますが、何度かけてもつながりません。そこで、Aさんは部内のホワイトボードを見て、彼が行き先として書いていた得意先に電話をしてみました。ところが、得意先の担当者は「今日はBさんとのお約束はありませんが……」と困惑気味。不審に思ったAさんは、帰社したBさんに「急ぎの確認で、お得意様のほうにも電話をしたところ、今日はアポがないと言われたんだけど、どういうこと?」と確認しました。

すると、Bさんは事情を説明するどころか、突然の激昂。「てめえ、ふざけんじゃねえぞ! そんな電話なんかして、お客さんにどんなイメージを与えると思ってるんだ! 会社の信用を下げるような真似をしやがって!」とすごい剣幕でがなりたてたのです。

公園のベンチで、頭を抱えてうつむく女性
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男性上司には逆ギレしていなかったかもしれない

それ以来、彼はいつもAさんに対してけんか腰で接するようになりました。体格のいいBさんが大声を出すと、それだけで部内には緊張感が走ります。Aさんの恐怖はいかばかりだったかと想像すると、いたたまれない気持ちになります。

もしこれが男性上司だったら、Bさんはこんなふうに逆ギレすることはなかったかもしれません。むしろ「デタラメなスケジュールを書いて、一体何をやっていたんだ!」とピシャリとやられて小さくなったことでしょう。Aさんが事情を聞こうとやわらかく質問したのをいいことに逆ギレしたBには、やはり女性を力で屈服させようとする偏見があったといわざるを得ません。また同時に、部下の行動を野放しにした上層部にも問題がある、ということも言えるでしょう。