「そこまでして権力を得たいとは思わない」
EUの法制化によって日本企業にも機関投資家の圧力がさらに高まる可能性もある。だが女性役員を増やすのは容易ではない。なぜなら候補となる女性部長やその下の課長が多くいる必要があるからだ。前出・白書によると、民間企業の部長級の女性比率は7.7%、課長級は12.4%にとどまっている。少ない役員ポストを女性の部長が射止めるには超狭き門といえる。
それ以外の理由として役員になりたいという女性が少ないという声もある。製薬会社の人事部長は「女性管理職比率は20%近くに達し、部長や部門長に就いている女性もいるが、能力があっても役員になりたいという意欲のある人が少ない。男性の役員は熾烈な出世競争を繰り広げてきた人が多いですが、そこまでして権力を得たいとは思わないし、役員になっても男性ばかりだし、いろんな意味で大変だという思いがある」と語る。
女性社外取締役は前年比30%増
こうした事情を考えると生え抜きの女性役員を輩出するのは難しい。そこで注目を集めているのが女性の社外取締役の招聘だ。2021年3月施行の改正会社法では、上場企業はコーポレートガバナンスの観点から取締役や執行役の業務執行の監督機能を果たす社外取締役の設置が義務づけられている。
またコーポレートガバナンスコードでは「独立社外取締役」を2人以上選任することが要請されている。さらに今年4月4日から東証に設置された大企業の向けのプライム市場では独立社外取締役を全体の3分の1以上選任しないといけないことになっているが、1000人近くが不足すると予測されている。
その中で脚光を浴びているのが女性社外取締役だ。ガバナンス助言会社のプロネッドが集計した21年7月1日時点の東証1部上場企業(2186社)の女性社外取締役は前年同期比30%増の1458人。2人以上の女性社外取締役がいる企業は262社と、前年の1.5倍に増えた。最も多いソニーグループ、三菱UFJフィナンシャル・グループなどは4人、積水ハウス、井村屋グループなど40社を超える企業は3人の女性社外取締役がいる。