4社を兼務している人も

経歴も多様だ。企業創業者や外資系日本法人の元社長、国内外企業の役員経験者もいれば、元官僚、公認会計士、裁判官・弁護士、大学教授、元スポーツ選手、出版社編集長、芸能人などと幅広い。しかもその多くが複数の企業の社外取締役を兼務しており、中には4社も兼務している人もいる。

それでも女性社外取締役はどこの企業でも引っ張りだこだ。SOICO株式会社が従業員1000人以上の企業経営者・役員300人を対象に実施した「女性社外役員に関する調査」(2021年10月)によると、女性社外取締役をすでに登用している企業は32.3%。「候補者を探している」が21.0%、「候補者の選考を進めている」が13.0%、「採用を検討しているが、まだ探していない」が11.7%。多くの企業が女性社外取締役を求めている。

しかし女性社外取締役を探している企業が多いが、課題と感じているのは「要件を満たす女性候補者が見つからない」が55.6%と最も多い。社外取締役に求められる要件は男女に限らず企業経営の経験者ということになるが、女性の場合は裾野が広い。

女性社外取締役を採用する理由についても聞いているが、「多様性を保ちたい」(29.4%)、「機関投資家や海外の投資家から指摘を受けた」(22.2%)を1番に挙げる企業が多かった。次いで「ESG経営を意識」(11.5%)、「女性の観点から事業への意見がほしい」(10.3%)というものだ。

元女性ニュースキャスターが社外取締役に

必ずしも経営トップの経験者に限らない。ある大手企業は国内大手企業の執行役員経験者を社外取締役に迎え入れているが、選任理由についてこう述べている。

「経営幹部としてのマネジメント経験、人材マネジメント及びダイバーシティ分野における豊富な知識・経験を、当社の経営監督機能の強化に活かしていただくため、社外取締役として選任しています」(有価証券報告書)。

マネジメント経験に加えて、女性活用など多様性の推進の経験を持つ女性が一つの要件となっている。それ以外にも前述したように元スポーツ選手や芸能人も選任されている。一見、要件がないように思えるが、そうではない。元女性ニュースキャスターを社外取締役に招いた建設関連会社の人事部長はこう語る。

「一つの専門領域で実績を残し、加えてある程度知名度がある人だ。元ニュースキャスターの場合は、社会正義や公正の観点から高い見識と知識を持ち、知名度もある。そして何より女性であることだ。彼女がボードに加わったことで男性経営陣も良い意味の刺激を受けていると聞いている。男性だけの取締役会で物事を決めていく時代ではないし、社会的イメージも良くない」

ただし、そうした社外取締役にふさわしい女性を探すのは難しく、取り合いになっているとも語る。