ほろ酔い顔の女性客「今日はちょっと気分がいいんです」

先ほどの、肉まんOLさん(呼び方失礼)の話には後日談があります。

肉まんを買わなくなり、毎日やってくるその人に話しかけることもなく時が過ぎたクリスマスの頃、いつもより遅く終電間際にレジにやってきたその女性は、お酒が入っているのか頬が赤らんでいました。そして、いそいそと商品をレジ袋に詰めている私に「今日はちょっと気分がいいんです」とつぶやいたのです。驚いた私は返答に迷いましたが、一瞬間をおいて「メリークリスマス」と言いました。女性は「アハ」と笑いながら去っていきました。その女性を店で見かけたのはそれが最後でした(BGM「いつかのメリークリスマス」)。

さあ勇気を出して、しかし気持ちを楽に、始まりの言葉を投げかけていきましょう。

勝浦 雅彦(かつうら・まさひこ)
コピーライター、法政大学特別講師、宣伝会議講師

千葉県出身。読売広告社、電通九州、電通東日本を経て、現在、電通のコピーライター、クリエーティブディレクター。15年以上にわたり、大学や教育講座の講師を務める。クリエイター・オブ・ザ・イヤーメダリスト、ADFEST FILM 最高賞、Cannes Lions など国内外の受賞歴多数。著書に『つながるための言葉』(光文社)、『ひと言でまとめる技術』(アスコム)がある。