※本稿は、齋藤孝・射手矢好雄『BATNA 交渉のプロだけが知っている「奥の手」の作り方』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
最悪の場合に備えて「代替案」を用意しておく
交渉というものは、必ず妥結するとは限りません。むしろたいていは難航して、最悪の場合交渉が成立しないことも現実にはよく起こります。
そんなときのために、わたしたちは自分の身を守るべく、「代替案」を用意しておく必要があります。交渉が成立しなかったからといって、身を滅ぼしたり、変に妥協して被害を被ったりすると元も子もないからです。
ですから、目の前の相手との交渉が成立しないことを想定し、「自分にはなにができるだろうか?」「なにをするのがベストなのか?」とつねに考え、次善の策を準備する必要があります。
これが〈BATNA〉(バトナ)です。
Best Alternative To a Negotiated Agreement(代替案のなかで最良のもの)の略で、交渉しているあいだ、心のなかでずっと持ち続け、いざ交渉が成立しなかったときに繰り出す“奥の手”というわけです。
交渉を成功に導く重要な「方程式」
実際の交渉では、時間の経過とともに移り変わる「交渉の7つのカギ」(第1回記事「『これが中国のルールだ』国家マウントしてくる中国企業に国際弁護士が突きつける“奥の手”」参照)の諸要素を比較しながら、目の前の〈オプション(選択肢)〉を検討し、〈利益(交渉で得たい成果)〉を実現できる〈合意〉を目指していくことになります。
そして、どの〈オプション〉よりも〈BATNA〉のほうがいいと判断すれば、必ず〈BATNA〉を取る。
なぜなら、それが自分にとって最良の選択になるからです。
〈BATNA〉と〈オプション〉の選択における方程式をまとめましょう。
〈BATNA〉が〈オプション〉よりもよければ、必ず〈BATNA〉を取らなければいけません。逆に、〈オプション〉が〈BATNA〉よりもベターかイコールの場合のみ、〈オプション〉を取ることになります。