劇的な改善には至っていないキッズライン

2021年夏にはシッターが乳児を激しく揺さぶる事案が発生。その動画がSNSで拡散されるまで報告等をしなかったため、2021年11月20日以降、「再発防止の実施状況の報告がなされ、適切な対策を講じたことが確認されるまでの期間」として、新たにキッズラインに登録したシッターや利用者が内閣府補助券を利用できない処分を現在も受けたままだ(参考記事)。

内閣府によるベビーシッターサービスの補助金事業は、サービスを利用する家庭に割引券の形で直接交付するもの。シッターサービスの利用者が内閣府が定めるベビーシッターを利用した場合、1回につき4400円分の補助金が出る。

既存の補助券利用者への影響を鑑み、内閣府はキッズラインを補助券利用対象事業者としての認可を今年度も更新しているものの、新規停止措置は解除していない。内閣府担当者によれば、「(審査・点検委員会の)審査で納得いただけるような劇的な改善はなされていないとみなされている」ためだ。

訴訟リスクも…マッチングで働くシッターの責任

このような中、キッズラインは、2022年から利用者がシッターを予約した時点でシッターの氏名・住所を自動送信する仕組みを導入した。同社は筆者の取材に対し「指導監督基準に従って契約成立時にシッターの住所を契約内容の一部として送信しております」と回答している。

しかし、当の厚労省側は「指導監督基準では、確かに契約が成立したときに住所等の情報提供をすることを定めていますが、必ずしも、自動送信のような形で一切のタイムラグを否定しているものではないと伝えている」という。

厚労省に対して同社はそれでも予約時を契約成立とみなす判断について「仮に当事者間においてサポートのキャンセル(契約不履行)をめぐる紛争が発生した場合にも、契約締結に関して相手方の住所・氏名の把握がなされていなければ、損害賠償などを求める訴訟等を提起することができない」ことなどを理由に挙げたという。いわば、トラブル発生時には、利用者とシッターが訴訟をすることを前提としているわけだ。

「気軽に」「隙間時間を使って」働けると宣伝されたマッチングシッターだが、働く側は命を預かる仕事であり、子どもに接する際は細心の注意を払うことはもちろん、自治体への届出等のさまざまな責任と、利用者とのトラブルなどが発生した場合は訴訟等のリスクを背負うことを理解して登録する必要がある。