わいせつ行為等を行った事業者名の公表が可能に

また、厚生労働省「社会保障審議会児童部会子どもの預かりサービスの在り方に関する専門委員会」は、2020年にシッターマッチング事業者であるキッズラインで、登録したシッターによる子どもへの性犯罪が明るみにでたことを受け、児童へのわいせつ行為を行ったベビーシッターの対策を議論していた

今回、専門委員会の取りまとめを受け、改正児童福祉法には「事業停止命令等を受けた認可外保育施設の名称等を公表できる」ことが盛り込まれた。これまでも厚生労働省が定める認可外保育施設の指導監督指針(局長通知)により各自治体の判断で公表しているものの、今回の改正により、公表の法的根拠が整った形だ。

ベビーシッターはマッチングプラットフォームなどで活動する場合、個人であっても「認可外保育施設」として登録をする必要があり、利用者は近所に登録シッターがいるかどうか「ここdeサーチ」というデータベースで検索できる。今回の児童福祉法改正を受け、今年9月には、氏名等とともに「ここdeサーチ」に事業停止命令等が記載される見通しだ。

利用者が過去の行政指導情報を検索した上でシッター等を選ぶことができるようになるほか、実質的には、犯罪等を行ったシッターが登録することを抑止する効果が期待される。

ただし、これらの資格停止やデータベース登録では初犯は防げないほか、塾や学童、習い事など子どもが関わる広範な活動をカバーできないという課題もある。英国で子どもに関わる仕事をする大人について犯罪歴等のないことを確認するための制度DBSの日本版を導入すべく「内閣官房こども家庭庁準備室」での議論は続く。

マッチングプラットフォームが抱える課題

ベビーシッターのマッチングプラットフォームを巡っては、課題も残る。最大手のキッズライン社では、わいせつ事件に続き、2021年には本来シッターに義務付けられていた自治体への届出が無届のまま内閣府の補助金対象として201人のシッターをマッチングしていたことが明らかになり補助金返還を求められる(参考記事)など、不祥事が続いている。

キッズライン社は、「安心安全」をうたい、「厳格な審査」をしていると説明してきたが、筆者の取材により、過去、ずさんな審査体制や運営側による評価の偽装などをしてきたことが明らかになっている(参考記事)。

抱っこひもでおぶっている赤ちゃんが寝ている間にスマートフォンを使用する母親の手元
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