優待廃止はWパンチの大ダメージになりうる

人気の株主優待ですが、優待銘柄(優待を実施する企業)への投資については、優待銘柄であるがゆえの、大きなリスクがあります。

それは、株主優待の廃止。

株主優待は義務ではないので、経営陣の判断で、突然廃止となることもあり得るのです。優待廃止となれば、通常、株価は下落します。とくに人気のある優待銘柄など、優待目当ての投資家からの失望売りが激しく、目も当てられないような大暴落となることも珍しくありません。

それはすなわち、投資家にとっては「優待がもらえなくなるというショック」だけでなく、「保有銘柄の値下がりによる損失」というWパンチなのです。

私自身、そんなWパンチを何度も食らっております。

書類が舞うオフィスで頭を抱えている女性
写真=iStock.com/settaphan
※写真はイメージです

優待廃止で株価が2割以上暴落した不動産会社

その1つがエリアクエスト(8912)という不動産会社でして、当時200円台の株価(投資金額2万円台)でクオカード1000円分がもらえるという(※1)、なかなか魅力的な優待を実施している会社でした。

(※1)正確には優待券2000円分との選択だが、大阪在住の私にとっては、近くに店舗がないので関係なし。

私もその魅力に惹かれて投資をするも、突然、優待廃止を発表。200円を大きく超えていた株価ですが、その日のうちに2割以上暴落し、その後も下落を続けて100円程度まで落ち込み、1万円以上の損失を被りました。

その後送られてきた、もう二度とはもらえないクオカードを眺めては、「1万円以上した1000円クオカードだったな……」との苦い経験があります。

優待廃止を発表したエリアクエストの株価

他にもロングライフHD(4355)、ミサワホーム(上場廃止)等、優待廃止によって受けたWパンチは、ゆうに10発を超えるでしょうか。このWパンチのダメージは数字以上に大きいもので、優待廃止とは、優待投資家にとって、絶対に避けたい事態なのです。

優待廃止企業が増えた3つの理由

しかし近年、株主優待の廃止が相次ぎ、優待実施企業数が11年ぶりに減少したことは冒頭に書いたとおり。優待投資家にとって受難の時代となりつつあるわけですが、ではなぜ、今、優待廃止が相次いでいるのでしょうか?

主な要因としては、以下のものが挙げられます。

1 コロナ禍による影響

優待銘柄には外食、小売り、レジャー、旅行といった、一般消費者にとって身近な業種が多いのですが、これらはコロナの影響をモロに受ける業種でもあります。優待実施には少なくない費用負担が発生するわけですから、コロナによって将来の業績見通しが不明瞭となれば、それは優待廃止の要因となります。

2 株主還元の不公平

個人投資家にとっては嬉しい株主優待ですが、機関投資家や外国人投資家は優待の恩恵を受けにくく、優待制度は不公平だとの声は以前からありました。それが近年、「株主との対話」が求められる風潮が強まる中で、そうした声がますます強くなってきたことも、優待廃止の要因の1つです。

3 東京証券取引所の市場再編

2022年4月4日から東京証券取引所の市場区分が見直され(「プライム」「スタンダード」「グロース」に再編)、それに伴い、各市場への上場基準の1つである株主数が、以前よりも緩和されました。これまで、一定の株主数を確保するために優待を実施していた企業にしてみれば、その株主数のハードルが下がることは、(優待実施の必要性が薄れることから)優待廃止の要因となります。