リモートワークで女性管理職の残業が増えている

また女性の活躍に関しては、リモートワークの普及で新しい問題も浮かび上がっている。コロナ禍以前はリモートワークが浸透すればマネジメントも容易になり、女性管理職を多く輩出するだろうという意見が多かった。

しかし、前出の武藤氏は「現実にはそうなっていません。なぜなら経験や知識などマネジメントの基礎を身につけないといけないときに、リモートによるマネジメントという他の人が経験したことのないことを一足飛びにやらないといけません。特にマネジメントのベースの経験がない新任の女性管理職の皆さんは部下と直接やり取りできないために、仕事の進捗の確認などコミュニケーションを丁寧にやろうとしていますが、その結果、自分の生活が後回しになってしまい、育児に割く時間が減るなど苦労しています。リモート下のマネジメントのあり方を含めて踊り場に立たされている女性も少なくない」と指摘する。

パーソルホールディングスの「男女の働き方とキャリア意向に関する実態調査」(2022年3月4日)によると、新型コロナウイルス感染拡大以降の残業時間は男性管理職が「増えた」は12.6%、「減った」が31.2%。一方、女性管理職は「増えた」が33.3%、「減った」が18.8%と、「増えた」の方が14.5ポイントも上回っている。リモートワークも含めてコロナ禍で女性管理職にしわ寄せが及んでいる。

女性活躍が進まない原因は企業の働き方、働かせ方など組織や人事施策を含む構造的問題に根ざしている。改正女活法の対象となる中小企業にとっても大きな課題となるのは間違いないだろう。

溝上 憲文(みぞうえ・のりふみ)
人事ジャーナリスト

1958年、鹿児島県生まれ。明治大学卒。月刊誌、週刊誌記者などを経て、独立。経営、人事、雇用、賃金、年金問題を中心テーマとして活躍。著書に『人事部はここを見ている!』など。