若手の離職の原因は「マッチングミス」ばかりではない

中堅層や管理職層との相談では、「最近の若者は主体性がない」「困ったことがあっても相談もしてこないから、把握できない」といった不満を聞くことが少なくありません。

けれど、そもそもなぜ、若手社員に主体性を求めるのでしょうか。経験もスキルも未熟な若手社員に必要なのは、スモールステップで成功体験を積み、職場に適応することです。一つひとつの仕事を積み上げていくことで、いずれは先輩や上司のようにスキルを獲得し、会社や社会に貢献できるという期待感が醸成されます。

この土台を無視し、「自分で考えて動け」「なぜ言われたことしかやらないのか」という叱咤しったが繰り返されているとしたら、それは指導という名のパワハラでしょう。

また、きつい言葉をかけられることこそなくても、ベテラン社員と変わらないような簡単な指示、フォローしか受けられず、途方に暮れてしまう若手も。毎日、「これでいいのだろうか?」という不安の中で仕事をする苦しさは、想像するに余りあります。

私のところには、「自分にはこの仕事は向いていないのかもしれない」とうなだれて離職の相談にくる若手社員も少なくありません。彼らが離職を考えるほどに追い詰められてしまったのは、決して業務へのマッチングミスからではありません。最大の原因は、自分の将来に期待が持てないことへの幻滅なのです。

新年度の会社員
写真=iStock.com/monzenmachi
※写真はイメージです

管理意識から脱却して令和型マネジメントに

1990年代半ばまでの経済成長時代は、一律の管理のほうが日本の働き方に合っていて、「管理職」という言葉も生まれました。不公平があってはならないという日本的な平等主義もあってか、広く一律のマネジメントが行われてきました。

しかし、現代においては、製品もサービスも、そして顧客も多様化しています。管理職という概念も、新しい時代に合わせてアップデートすることが必要でしょう。

かつての一律のマネジメントの中では、そのマネジメントスタイルに適応して成果を出せる人が優秀で、そこからあぶれた人は能力不足とレッテルを貼られていました。しかし、人材獲得の競争も激化している今、ひとつの型にハマらないからといって「無能」としてしまうのでは、あまりに効率が悪い。

令和型のマネジメントでは、集団ではなく一人ひとりに目を向け、それぞれの長所を伸ばしていくことが重要です。マネジメント層の仕事は、「管理」よりも「育成」。いよいよ意識改革をするタイミングに来ていると思います。