いいママでいられるのは仕事があるから
当時は睡眠を削ればもうちょっと仕事もできるだろうと思っていたが、どんどん効率が悪くなっていくことに気づかなかった。コーチに「今晩は8時間寝なさいね」と言われたときは時間の無駄と思ったけれど、まずは睡眠をとって身体を休めることから始める。もともとスポーツが好きで、運動すると頭もすっきりすることを思い出し、早朝にテニスやジョギングで汗を流すようにした。そうしてプライベートの時間も大切にすることで心の健康も少しずつ取り戻し、前向きに日々を過ごすコツを学んだという。
「私にとって仕事と家庭はどちらも大事なもの。仕事をしているから、いいママでいられると思うのです。私はよく『仕事は子どもからのバケーション。子どもたちは仕事からのバケーションです』と家族に話しています。一日にどちらも行き来して、両方をやるからこそ、それぞれ効率がいいし、イライラすることも減っています。だから、いいママでいられると思うし、子どもたちも母親が家の外で活躍している姿を見られるでしょう」
松岡さんは、過去の経験や先入観などに捉われず、「今、この瞬間」に意識を向けるマインドフルネスを実践している。過去を振り返って失敗を悔んだりせず、今を大切にして生きる。反対に、将来こうなっていたいからと逆算して何かをすることもしない。仕事も子育てもちゃんとエンジョイしてやっていれば、将来やりたいことにつながっていくのだからと。実際、松岡さんが現在とり組む働く家族(女性)を助けるサービスは、そんな毎日の中から生まれたアイデアが詰まっている。後編では松岡さんの次なるチャレンジを追う。
1964年新潟県生まれ。学習院大学卒業後、出版社の編集者を経て、ノンフィクションライターに。スポーツ、人物ルポルタ―ジュ、事件取材など幅広く執筆活動を行っている。著書に、『音羽「お受験」殺人』、『精子提供―父親を知らない子どもたち』、『一冊の本をあなたに―3・11絵本プロジェクトいわての物語』、『慶應幼稚舎の流儀』、『100歳の秘訣』、『鏡の中のいわさきちひろ』など。