オンナ対オンナの構図をつくり高みの見物を決めるおっさんたち

また、メディアも「おっさん的価値観」を日本社会に定着させてしまっている面は否定できません。たとえば、選挙中の報道で、女性の姿が目立つとメディアはすぐに「美しすぎる○○議員」や「○○ガールズ」と命名します。これらの用語からは、明らかに女性を下に見ている思考回路が透けて見えます。

また、メディアは政治家、経営者、タレントなど、あらゆる分野で「オンナ」対「オンナ」の構図をつくるのも大好きです。私には「オンナの敵はオンナ」という刷り込みを図っているとしか思えませんが、この構図をつくりだして高みの見物を決め込むのは、いつも「おっさん」たちです。おっさんという「マジョリティ」(多数派)に向け、社会に出ようとする女性(マイノリティ)をネタにする安易なフォーマットの報道を繰り返していることは、日本社会の「おっさん化」の一因と言えるでしょう。

単なる数合わせでは「おっさん社会」は変わらない

ちなみに2021年度の日本ラグビー協会の女性理事は全25名のうち10名。女性比率は40%となり、スポーツ庁が策定したガバナンスコードの目標値に達したことになります。なかでも浅見敬子さんは女性初の副会長となりました。

谷口真由美『おっさんの掟 「大阪のおばちゃん」が見た日本ラグビー協会「失敗の本質」』(小学館新書)
谷口真由美『おっさんの掟 「大阪のおばちゃん」が見た日本ラグビー協会「失敗の本質」』(小学館新書)

9月30日には新リーグ運営法人の名称は「一般社団法人ジャパンラグビートップリーグ」から「一般社団法人ジャパンラグビーリーグワン」に変更。理事長も森重隆さんから理事の玉塚元一さんに代わりました。理事には、チームの「幹事」たちも名を連ねています。女性が増え、協会内部の情報が共有されて、以前とは違う「風通しのよい組織」になったのか。“ラグビー村”の異質さを女性理事が率直に指摘し、それが改善されるような雰囲気になっているのか。

部外者の私には知る由もありませんが、2年間の在籍期間で得た経験から言えば、その道のりはまだまだ遠いような気がしてなりません。女性活躍を推進する組織という体裁を整えるために、女性理事たちを単なる「数合わせ」と考えていないことを祈るばかりです。

谷口 真由美(たにぐち・まゆみ)
法学者

1975年大阪府生まれ。大阪芸術大学客員准教授。専門は国際人権法、ジェンダー法など。「全日本おばちゃん党」を立ち上げ、テレビやラジオのコメンテーターとしても活躍。2019年6月、日本ラグビーフットボール協会理事に就任。2020年1月にラグビー新リーグ法人準備室長に就任。その後新リーグ審査委員長も兼任するが、2021年2月に法人準備室長を退任。6月に協会理事、新リーグ審査委員長も退任。著書に『日本国憲法 大阪おばちゃん語訳』(文藝春秋)、『憲法って、どこにあるの?』(集英社)ほか。