15万部突破『70歳が老化の分かれ道』が話題の精神科医・和田秀樹氏がセブン‐イレブン限定書籍『40歳から一気に老化する人、しない人』を上梓した。40歳こそ老化の始まり、この年代から「足りないものを足す健康法」へのシフトが重要だと説く。同書の一部を特別公開する──。(第1回/全4回)

※本稿は、和田秀樹『40歳から一気に老化する人、しない人』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

40代以降は健康診断で「異常値」が激増

日本では、企業が従業員に健康診断を受けさせなければならない決まりがあり(労働安全衛生法)、ほとんどの人が健康診断を受けています。そして40代、50代になって、健康診断ではじめて「異常値」を指摘される人が大勢います。あなたもその一人かもしれません。

ビビりますよね。医者の指示どおり、「正常値」にすべく、生活習慣を変えようと思うのも当然です。人によっては、乱れた食生活や生活習慣など改善すべき点もあるでしょう。とはいえ一般には、異常値が出たからといって、あせって医者に言われるがまま生活を変えなければいけないというものではありません

実は私自身は、健康診断を受ける必要などないと考えています。医者として30年以上にわたって高齢者を専門に患者さんを診てきた経験から言うと、健康診断を受けたからといって寿命が延びるとは思えないのです。むしろ、高齢になるほど、生活の質を維持するためには健康診断など受けないほうがよいとさえ考えています。

実際に健康診断に寿命を延ばす効果があるのだとしたら、なぜ、現在の日本の女性は男性に比べて平均寿命が長いのでしょうか。

人工知能を表したイメージ
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いま平均寿命近くまで生きている男性は、会社勤めなどをしていた人が多く、健康診断も定期的に受けてきたはずです。しかし、同じ時代を生きてきた女性は、そのころは専業主婦が多かったため、男性に比べて健康診断などを受ける機会は少なかったといえます。

もし、健康診断が本当に効果のあるものなら、女性に比して男性の寿命が延びてもいいものですが、実際の統計はそのようにはなっていません。不思議ですよね。

中高年以降は「足し算医療」にシフトしよう

健康診断で異常値が出ると、医者は「○○を控えましょう」と指導します。つまり現在の生活を変えて、過剰だと思われるものを「引く」ことを求めるわけです。

でも私は、ある程度の年齢になった人は、引いてはいけないと考えています。歳を重ねても若々しく健康的に生きるためには、不足しているものを「足す」ことこそ大切です。

和田秀樹『40歳から一気に老化する人、しない人』(プレジデント社)
和田秀樹『40歳から一気に老化する人、しない人』(プレジデント社)

日本では不思議なことに、塩分にしても血糖値にしてもコレステロールにしても、健康診断で基準値オーバーを指摘されることはあっても、あるいはさまざまな栄養素にしてもそうなのですが、「足りないことの害」について語られることはまれです。

でも、私が高齢者を専門として患者さんを診てきた経験では、歳をとれば、足りないより余っているくらいのほうがよい。歳をとればとるほど、いうなれば「引き算医療」よりも「足し算医療」が賢明になるのです。

中高年が考えるべきは、不足している栄養をしっかりとることと、食べても太らない体を取り戻すことです。そして、細胞の炎症を防ぎ、体の酸化を防ぐ。体の機能が正しく働けば、実現可能なことです。