70歳になったときに一番持っていたいもの

これはかなり個人的な価値観ですが、私だったら70歳ぐらいになって一番持っていて価値があるなと思うのは、若い友だちです。

たとえば、自分が70歳になってスマホが使えなくても、若い友だちがいたら教えてもらえますよね。これからスマホ以上のIT機器は絶対に登場するでしょうから、そのときに「どうやるの、これ?」という感じで聞けます。

友だちと言えるぐらいの距離感が理想ですが、いずれ若い人がどんどん活躍できる場を私がつくれたらいいなと思っています。ですから今、私にできることは、そういう場づくりの準備。そうやって意識していれば、自然に世代を超えた友だちもできるだろうし、貯金よりもはるかに価値のある資産だろうと思います。

また未来の社会は、今と同じコストでは回っていないと私は考えています。つまり社会のインフラも変わり、シェアもすすんで、生活コストが下がり、最低限のお金で暮らせるのではないかと思うのです。

そう考えると、ますます老後という概念自体、持たないほうが幸せなような気もします。

未来はお迎えするもの

未来というものは、淡々と想像すると不安になるものです。不安というのは、何かのセンサーにひっかかっているということ。そこでちょっと立ち止まって、どこに改善ポイントがあるんだろう、このエネルギーをどう転換させればいいんだろうというところに意識を向けると、不安は減るでしょう。

私が好きなのは「未来をお迎えする」という考え方です。

正月を迎えるとか迎春などとよく言いますが、お迎えするというのは徹底的に準備することです。お正月に神様がきたかどうかは誰にもわからないけれど、やはり家の隅々まできれいに掃除をして、鏡餅や門松を用意したら、お正月がやってきて神様をお迎えできたという気持ちになります。この時間の捉え方は日本人独特で、私はとても気に入っています。

ぜひ自分がお迎えしたい未来を考えてみてください。70歳になったときに健康で働ける未来がほしいなら、今は食事、運動、睡眠のバランスのとれた生活習慣を身に付けることがその準備になります。世代を超えて仲良くし合える仲間に囲まれていたいなら、今から積極的にネットワークをつくっておくことが準備になるかもしれません。

自分のビジョンがあって、それを意識してコツコツ準備していけば、いつの間にか理想の未来をお迎えできるでしょう。もちろん不安も消えているはずです。

構成=池田純子

伊藤 東凌(いとう・とうりょう)
両足院 副住職

京都「両足院」副住職。両足院で生まれ育ち、3年間の修行を経て僧侶に。アメリカFacebook本社での禅セミナーの開催やフランス、ドイツ、デンマークでの禅指導など、インターナショナルな活動も。7月には禅を暮らしに取り入れるアプリ「InTrip」をリリース。著書に『月曜瞑想』(アスコム)がある。