お金は人生をともにするパートナー
お金によって安心や幸せは手に入りませんが、だからといってお金のことを全く無視していいというわけではありません。お金というのは、不幸を回避するのに、大変助かるものだからです。
たとえば病気になっても、お金があったから望む医療を受けられたとか、仕事が忙しいときは、人にお金を払って助けてもらうといったことができます。また非常に悲しい側面ですが、自殺の原因の多くが経済的理由です。もし、その人に稼ぐ能力以前にお金の知識があれば、未然に防げたかもしれません。
さらに何か新しいことを始めるときにも、お金というのはガソリンの役目を果たすでしょう。
ですから、お金はそういうものだとまず知って、お金と仲良くする。これが手に入れば人生が変わると思うのではなく、パートナーのように伴走すれば、不幸を回避したり新しいことを始めたりするときに、役に立ってくれるはずです。
林の中に何を持って入るか
もともとお坊さんには、老後という概念はありませんが、もしかしたら一般の人も人生100年時代で、生涯現役で働く時代かもしれません。そうすると老後がなくなるので、「老後のために貯金」という行為自体、間違えている可能性があります。
理想は60代から70代、一般的にリタイアする年齢になったら、第一線から退いて、生産性ではなく、社会貢献に重きをおく働き方にシフトすることではないでしょうか。
仏教では、人生のサイクルを「学生期」「家住期」「林住期」と分けて、人生の後半は林の中に入っていくと言われます。もちろん言葉通りにとらえる必要はありませんが、林の中に入っていくというのは、どこか社会の中にもっと溶け込んで、貢献していくというイメージがあるように思えます。
その林の中に入るときに絶対に持っていたいものは何でしょうか。それを自分に問いかけると、お金ではない、今準備しておくべきものが見えてくると思うのです。