極度の不安からパニック発作を起こした場合にはどうすればよいのか。スウェーデンの精神科医、アンデシュ・ハンセンさんは「パニック発作は不安が強過ぎて全身に反応が起きることである。不安は2つのテクニック(呼吸とつらさを言葉にすること)で対処できる」という――。(第3回)

※本稿は、アンデシュ・ハンセン『メンタル脳』(新潮新書)の一部を再編集したものです。

扁桃体は脳の警報センター

扁桃体にはいくつも役割がありますが、その1つが「脳の警報センター」としての役割です。扁桃体はその役割を愚直に果たしていて、ちょっとした危険にも大々的に警報を鳴らします。念のために鳴らすこともあるので、実際には何事もない場合もあります。それでも、肝心な時に鳴らし損なうよりは鳴らし過ぎた方が良いという仕組みになっているのです。

要は火災報知器のようなものです。トーストがちょっとこげたくらいでいちいち鳴るのは厄介ですが、夜中に本当に火事が起きた時に鳴ってくれればいいのです。

私たちの脳もまさにそんなふうに反応します。「本当に危険な時に鳴らし損ねるよりは、念のため間違って鳴らすくらいかまわない」と考えているのです。脳の1番大切な仕事はあなたを生きのびさせることなのですから。

セキュリティシステム
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パニック発作が起きる理由

極端に強い不安は「パニック障害」や「パニック発作」と呼ばれ、不安が強過ぎて全身に反応が起きてしまいます。心臓がドキドキしたり、息が苦しくなったりして身体がいうことをきかなくなり、自分ではどうしようもなくなります。ストレスシステムが強く作動し、「すぐにここから出なきゃ、逃げなきゃ、じゃなきゃ死ぬ!」と思ってしまうのです。

「今、草むらで何かが動いた。ライオンが隠れているのかもしれない。逃げなければいけないのに、足が石に挟まって動けない!」パニック発作が起きるとそんな気分になります。

そのためか、逃げられないような場所、特に地下鉄の中や満員のバスで発作が起きやすくなります。何らかの原因で身体の警報システムが作動し、「もうダメだ、逃げられない」という気分になるのです。

この原因になっているのが扁桃体、特にきっかけをつくるのが扁桃体だと考えられています。扁桃体は危険を認識すると警報を鳴らし、ストレスシステムを起動させるので、心臓がドキドキして息が苦しくなります。しかし問題はここからです。

心臓と肺からのそのシグナルを脳が「危険なことが起きている証拠だ」と受け取り、ストレスシステムのアクセルをぐいっと踏むのです。すると心拍や呼吸がさらに激しくなり、それを脳がますます危険な証拠だと認識し──こうして負のサイクルにはまり、ひどいパニックを起こしてしまうのです。