働く人に合わせた環境をつくる

職場の「暑い、寒い、暗い」や、仕事で使用しているパソコンの性能なども含め、こうした環境への投資はとかく後回しになりがちです。しかし実は、環境への投資は、それだけで社員のモチベーション低下を防ぐことができます。

沢渡あまね『なぜ、日本の職場は世界一ギスギスしているのか』(SB新書)
沢渡あまね『なぜ、日本の職場は世界一ギスギスしているのか』(SB新書)

テレワークの導入に際しても、しばしば日本の家の狭さが問題になりました。日本の住宅の場合、自分の部屋を持っている人はそれほど多くはありません。そのため、学校も休みになり、夫婦二人ともテレワークになった場合、狭いリビングにみんなが集まって仕事や勉強をするケースも少なくありませんでした。

これではZoomで会議をするなど不可能ですし、集中して仕事ができません。そのような時、企業の中にはビジネスホテルの一室をサードプレイスとして利用できるようにしたり、あるいはカラオケボックスを使えるようにしたりなどの工夫をするところもありました。

こうした社員の実情に応じた対応ができる会社で働いている社員は「自分たちを大切にしてくれている」と感じます。これからの時代、社員の雇用形態も働き方も多様化していきますが、だからこそ従来の画一的なオフィス環境ではさまざまな問題も起きるし、対応できない課題も増えてくるはずです。

そしてそうした不満が職場のギスギスにつながっていくだけに、これからの企業は働く人や働き方に合わせた職場環境づくりを進めていかなければなりません。

まとめ
・職場の物理的な居心地の悪さは、精神的にも、また仕事の効率面でも悪い影響を与えるため、改善したほうがよい
・お金をかけた設備投資ができない場合でも、休憩時間をずらし食堂やトイレの混雑を緩和する、休憩室やトイレをほんの少しきれいするなど、工夫によって改善できる
・完全自由なフリーアドレスは、自分の席が固定されていないことでストレスが高まったり、チームのコミュニケーションにおいて障害になったりするため、かえって生産性が下がる場合がある
沢渡 あまね(さわたり・あまね)
作家/ワークスタイル&組織開発専門家

1975年生まれ。あまねキャリア株式会社CEO/株式会社NOKIOO顧問/浜松ワークスタイルLab所長/国内大手企業人事部門顧問ほか。「組織変革Lab」主宰、DX白書2023有識者委員など。日産自動車、NTTデータなどを経て現職。400以上の企業・自治体・官公庁で、働き方改革、組織変革、マネジメント変革の支援・講演および執筆・メディア出演を行う。『問題地図』シリーズ(技術評論社)をはじめ、『新時代を生き抜く越境思考』(同社)、『職場の科学』(文藝春秋)、『チームの生産性をあげる。』(ダイヤモンド社)、『仕事は職場が9割 働くことがラクになる20のヒント』(扶桑社)など著書多数。