「勝ちパターン」尊重して環境整備
ABWの考え方が日本でも注目され始めています。Activity Based Workingの略で、各々の仕事の特性に応じて個人個人が最適な環境を選べるようにする、オランダの企業発の考え方です。すなわち組織は、個々人の勝ちパターンを尊重し、勝ちパターンを実践してパフォーマンスを上げられる環境を整備しましょう。こう捉えることができます。
従来の日本のオフィスは、これまで述べたように大量生産に適したものであり、限られたスペースの中にいかに効率よく人を詰め込むかが重視されていました。結果、たくさんの机が並ぶ部屋と、会議のための部屋くらいしか用意されていませんでした。しかし、人材の多様化と職種の細分化や専門化が進む昨今においては都合が悪い。固定的な場所で、ウマの合わない人と四六時中顔を合わせて仕事をするのは精神的にもよくありません。常に誰かが電話で話していたり、雑談が行われたりしてかなりうるさい実情もあります。
これでは集中して仕事をしたいと思ってもできません。何か思いついてメンバーとミーティングをしたくても、会議室が空いていなければ簡単に集まることもできません。
ABWの考えに則し、オフィスとコミュニケーションのあり方を見直す企業が増えてきました。
グーグルのイノベーションの秘密の一つと言われているのが「食べ物から150フィートルール」です。カフェ、レストラン、共有スペースのお菓子など食べ物はさまざまですが、オフィスのどこにいても、必ず150フィートで食べ物にたどり着けるようになっています。
これは単なる福利厚生とは違います。人は顔を突き合わす回数が多いほど、互いの考えが似通って親しくなれると言います。であるならば社員同士が顔を突き合わせる回数を増やし、時間を長くすることが効果的です。食べ物がきっかけになって、社員が共有スペースに集まり、そこで気軽に雑談や意見交換が行われます。
かつては「タバコ」「飲みニケーション」
かつての日本企業ではタバコを吸うためのスペースや、アフターファイブの「飲みニケーション」の場がこうした役割を果たしていましたが、最近のオフィスはほぼ禁煙です。その代わりに、カフェコーナーやお菓子コーナーなどが設けられるようになりました。食堂をお昼時に使うだけでなく、それ以外の時間も開放してコーヒーを飲めるようにする。あるいはミーティングスペースを創る動きも、こうした流れの一つと言えるかもしれません。
決められた場所以外にこうした多様な場所が増えれば、それだけ働く人にとっては働きやすくなります。決められた場所を離れる仕組みは、職場のギスギスも間違いなく緩和させます。今後もこうしたオフィスの改造計画が進めば、職場のギスギスは徐々に解決されるのではないかと期待しているところです。