70年代「ザボディショップ」を創業したアニータ・ロディックは、ソーシャルビジネスの草分け的存在として、今も高く評価されている。創業からわずか8年で、小さな店を時価18億円超の企業に育て上げた女性が語った成功の秘訣をお届けしよう――。
写真提供=THE BODY SHOP JAPAN

ソーシャルビジネスの先駆者

起業のきっかけは人それぞれだが、社会問題や身近な問題を解決したい、新しい市場を生み出したいなどの動機で、自分のビジネスを始める人は増えている。一昔前に比べると金銭面でもスキル面でもサポートが得やすくなり、ハードルは確実に下がっていると言えるだろう。起業家の並外れた情熱が人を動かすことも事実だが、それだけで事業が成功するわけではない。

しかし、いつの時代にも挑戦者は果敢だ。業界経験もなくイギリスの片田舎で始めたスキンケアショップを、独自の経営哲学で世界ブランドに育て上げた女性起業家の半生を追ってみると、個人の信念とビジネスを相乗的に結び付けたひとつの好例を読み解くことができるだろう。

「人にも地球にもやさしい」をビジネスに。ママ起業家の誕生

スキンケアブランドの創始者であり、地球環境や人権に配慮したエシカル経営者の先駆者として世界で評価されているアニータ・ロディックは、70年代に「ザボディショップ」の1号店をオープンした。彼女にとってこのビジネスのスタートは、シンプルに娘たちを養うためだけだった。ただし、自分らしい特別な店にしようと、若い頃ヒッピー旅行でアジアやアフリカ、ポリネシアなどを旅して知った、現地の女性たちが使っていたカカオバターなどの「自然派美容」を目玉商品にするアイデアを思いつく。

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ハーブやオイルなど体にやさしい天然原料を使い、容器はリフィルやリサイクルできること、動物実験には反対、過剰包装も広告もなし……という後にブランドの根幹をなすサステナブルな方針を打ち出した。ユニークでナチュラルな製品が女性の共感を得て大ヒット。8年後には世界中に支店を広げ、80年代にロンドン証券取引所に上場した時の時価は18億4000万円にものぼった。