ニューヨークは年収2000万円でも「中流層」
「ニューヨーク州の企業に車で通勤している知人のアメリカ人男性上級マネージャーは、年収が推定12万ドル(1320万円)を超えていますが、教育費や自動車価格の上昇、医療保険料の高騰、そして物価の上昇により『家計が苦しい』とこぼしています。マンハッタンの平均家賃は2008年のリーマンショックの影響で2009~11年に下がりましたが、その後は上がり続け、コロナ禍前の2019年末で3300ドル(36万3000円)です。ニューヨーク市は高額所得者が多く、年収2000万ドル(2200万円)近くても『中流層』に分類されるのです」(肥田氏)
米ピーターソン国際経済研究所によれば、コロナ禍により2020年は失業率が一気に上がったが、今年(2021年)に入ると経済が回復、離職やもともとの人手不足により労働市場が逼迫して、5~7月のわずか3カ月間で名目賃金は2.8%上昇した。しかし物価の上昇を加味すれば実質賃金は下がったという(2021年7月30日付け)。
「都市部では空前の人手不足で賃金がかなり上がりましたが、インフレで食費やガソリン代もどんどん高くなりました。コロナ禍でも経済回復が進むと物価が急激に上昇し、小房にカットされたブロッコリーが一晩で1ドル上がっていたのには驚きました。ニューヨークの一般世帯にとっては、10年前に比べて生活が楽になったという実感はないでしょう。
上流階級は大きく影響を受けていない
しかしウォール街(金融街)や大手テック企業に勤めるエリート層、または企業幹部になれば話は別です」(肥田氏)
役職別の平均年収を見ると、マネージャー全般(管理職全般)で1391万円、なかでもファイナンシャル(金融)マネージャー1667万円、マーケティングマネージャー1699万円、コンピュータ・情報システム(IT関連)マネージャー1779万円が高い。
「日本と大きく異なるのは、アメリカでは、差別による解雇を除けばほぼ自由に雇用調整できるため、企業の成長に貢献しにくくなった高給のベテラン社員は解雇される一方で、有能な人材は獲得競争になって給料が上がることです。より大きく見れば、日米格差の背景には移民の存在があります。アメリカでも高齢化は進んでいますが、若く有能な移民が、労働力の頭数として経済を支えているだけではなく、シリコンバレーやニューヨークでイノベーションやスタートアップ(起業)を生み出す源泉になっています」(肥田氏)