弟がいる長女のほうが性役割分業意識が強くなる

これまで説明してきたとおり、「長女・弟」と「長女・妹」では長女の直面する状況が異なります。

「長女・弟」の場合ほど、母親と過ごす時間が増えるだけでなく、女の子らしく振る舞うことを意識するようになります。このため、「長女・弟」の場合ほど、伝統的な性別役割分業意識を持ちやすくなるわけです。

この結果として、弟がいる長女ほど、伝統的な性別役割分業意識に沿った学業・職業選択や家族形成を行いやすい可能性があります。

具体的に言えば、学業面では理系よりも文系を選びやすく、職業面では男性よりも女性比率が高い職種を選びやすい可能性があります。また、これらの職種は相対的に所得水準が低い場合が多いため、所得もやや低めになっていることが予想されます。

家族面では結婚し、子どもを持っている比率が高くなっている可能性があります。

以上のような予想が成り立つわけですが、はたして実態はどうなのでしょうか。

弟がいる長女のほうが男性比率の低い職種で働き、所得水準が低い

まず、デンマークの分析結果から仕事、学業、家族面の結果を見ていきたいと思います。

デンマークはさまざまな指標から日本よりも男女間格差が小さい国として知られていますが、そのような国でも弟がいる長女と妹がいる長女の間で仕事、学業、家族面で違いが見られるのでしょうか。

実際の分析結果を見ると、その答えは「イエス」です。

「長女・妹」と比較して、「長女・弟」の場合は、職場における男性の比率が約1.2%低く、STEM(科学・技術・工学・数学)の分野で働く割合が約7.3%低くなっていました。

長女にパートナーがいる場合、そのパートナーの働く職種における女性比率も「長女・弟」の場合は約2%低くなっていました。

所得についても「長女・弟」の場合は、30代の年収が約2%低くなっています。このマイナスの影響は第1子を出産した後ほど拡大する傾向がありました。

学業面については、「長女・弟」の場合、STEMの分野を専攻する割合が約7.4%低くなっていました。

さらに、結婚・出産面について見ると、「長女・妹」と「長女・弟」で差はみられませんでしたが、「長女・弟」の場合は同棲割合が低くなる傾向がありました。

アメリカの研究では主に所得との関係を見ていますが、やはり「長女・弟」の場合は、年収が低くなっており、約7%年収に差が生じることがわかっています。