兄弟姉妹の組み合わせによって親の行動パターンが変わる
1つ目は、「親の行動パターンの変化」です。
「長女・弟」と「長女・妹」では親の子どもへの接し方に変化が生じると考えられます。この背景には、親は自分と同じ性別の子どもの方が一緒の時間を共有しやすいといった傾向があるためです(※2)。
例えば、男の子の場合、ある程度の年齢になると野球やサッカーといったスポーツをやることが多くなりますが、このような活動は母親よりも父親とやることが多いでしょう。
また、女の子の場合、成長とともにオシャレやメイクに興味を持つようになりますが、このような活動は母親とやることが多いでしょう。
このように、「父親は男の子」と「母親は女の子」と共に過ごす時間が多くなるため、「長女・弟」の場合だと、より同性の親の影響を強く受けるようになります。子どもはこの中でさまざまな行動や考え方、社会的規範も学んでいきます。
この結果、「長女・妹」と比較して、「長女・弟」の場合ほど、より伝統的な性別役割分業意識を持つようになると考えられます。
つまり、「長女・弟」の場合ほど、「男性=仕事、女性=家事・育児」という考えを意識し、それに準じた行動をとりやすくなるわけです。
※2 Brenøe, A.A., 2021. Brothers increase women’s gender conformity. J Popul Econ. の分析によれば、弟がいる長女ほど幼少期に母親と過ごす時間が増え、父親と過ごす時間が減少することがわかっています。
兄弟姉妹の組み合わせによって子どもの行動パターンも変わる
2つ目の理由は、「身近に異性がいることによる子どもの行動パターンの変化」です。
心理学の数多くの研究によれば、子どもは自分の兄弟姉妹と差別化することをつうじて、個性を獲得する傾向があります(※3)。中でも異性の兄弟姉妹がいる場合、自分の性別に準じた行動や態度をとることで、個性を獲得する場合があります(※4)。
例えば、弟がいる場合、長女の行動パターンが「よりお姉ちゃんらしく、女の子らしいもの」になるといったことが考えられます。妹がいる場合と違って、弟がいると自分の性別をより強く意識するというわけです。
このように、長女の行動パターンは妹がいる場合と弟がいる場合では異なってくると考えられます。
「長女・弟」の場合ほど、より自分の性別に合致した行動をとりやすくなり、これが伝統的な性別役割分業意識を持つことにつながると考えられます。
※3 Feinberg, M.E. , Hetherington, E.M. , 2000. Sibling differentiation in adolescence: implications for behavioral genetic theory. Child Dev. 71 (6), 1512–1524 。Plomin, R. , Daniels, D. , 1987. Why are children in the same family so different from one another? Behav. Brain Sci. 10 (1), 1–16。
※4 Abrams, D. , Thomas, J. , Hogg, M.A. , 1990. Numerical distinctiveness, social identity and gender salience. British J. Social Psychol. 29 (1), 87–92 。Cota, A.A. , Dion, K.L. , 1986. Salience of gender and sex composition of ad hoc groups: an experimental test of distinctiveness theory. J. Pers. Soc. Psychol. 50 (4), 770。