2人に1人ががんになる時代
がん検診オプション検査のすすめ

がんを早期発見・治療するには、がん検診を定期的に受けることが何より大切。人間ドックで用意されている、より精度の高いオプション検査にはどんなメリットが? 選ぶべき検査とは?

毎年受けるがん検診。それで本当に安心できる?

「2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなる時代。仕事が忙しいからと、がん検診を後回しにすることは、死亡リスクを無視しているのと同じこと。かなり危ないことだと認識してほしい」とAGE牧田クリニック院長の牧田善二さんは警鐘を鳴らす。

糖尿病の専門医として年間3000人以上の患者を診ている牧田さん。糖尿病患者はがんの罹患りかん率が高まるため、早期発見できる精度の高いがん検診を患者にすすめているという。しかし、一般的に実施されているがん検診は早期にわかるものもあれば、そうではないものもある。「がん検診を毎年受けているから安心、と考えるのは早計。がんを早期で確実に発見できる、精度の高い検査を選ぶべき」と牧田さんは話す。

国はがん死亡率の減少を目的とした5種類のがん検診を推奨している。胃がん検診(胃部エックス線検査または胃内視鏡検査)、子宮けいがん検診(細胞診)、肺がん検診(胸部エックス線検査および喀痰かくたん細胞診)、乳がん検診(マンモグラフィ)、大腸がん検診(便潜血検査)だ。これらは自治体からの案内で受けられるほか、職場で受ける健診や人間ドックのメニューに含まれることも多い。

がん罹患数の順位(2018年)、がん死亡数の順位(2019年)

図を見ると大腸がんは、女性の罹患数2位、死亡数1位で、ここ50年間で死亡数が約6倍に増えている。大腸がんは早期発見、早期治療でほぼ治癒できるが、便潜血検査では早期のがんを見つけにくいという。

「便潜血検査で陽性反応(出血)があれば内視鏡検査を行いますが、便潜血検査では早期がんが見落とされやすい。はじめから内視鏡検査を行えば早期がんが見つけやすく、ポリープ(大きくなるとがん化しやすい)があればその場で切除できるので、がん予防にもなる。女性は腸の内視鏡検査に心理的抵抗を感じる人も多いですが、ぜひ受けてほしいですね」

その他、近年増えている肺がんも胸部エックス線検査では不十分という。人間ドックでオプション検査として用意されている腹部超音波(エコー)検査も、奥に隠れた臓器のがんを観察しにくい。また、予後の悪い膵臓がん、胆管がん、卵巣がんを早期で見つけるには、技師の技量に左右されるところが大きいという。

必要な検査は全身CT、胃と腸の内視鏡、脳MRI

牧田さんがすすめるのは、毎年行う血液検査や尿検査などの基本的な健診に加え、「全身CT(胸部と腹部CT)」「胃と腸の内視鏡」、「脳MRI」の3つだ。全身CTと胃の内視鏡は毎年、腸の内視鏡はポリープが見つかった場合は毎年、見つからなかった場合は2〜3年に1度。脳のMRIは異常がなければ5年に1度行うことをすすめている。さらに女性なら、被ばくのない乳腺MRIと、子宮と卵巣を見る骨盤MRIも加えれば、完璧に近くなるという。

「将来の認知症が不安な人は、脳MRIと同時に実施できるVSRADという画像診断装置で脳の海馬傍回の萎縮度をチェックするといいでしょう。アルツハイマー型認知症には有効な予防薬があるので、早期診断で予防できます」

牧田さんおすすめの検査、Plus Check
糖尿病専門医・医学博士 牧田善二さん
教えてくれた人
牧田善二(まきた・ぜんじ)
糖尿病専門医・医学博士
AGE牧田クリニック院長。北海道大学医学部卒業。ニューヨークのロックフェラー大学でAGEの研究を行う。久留米大学医学部主任教授などを経て、2003年同クリニックを開設。