多忙を理由に健診を受けていない人や、新型コロナウイルスの感染が心配で受診を控えている人は少なくないはず。40代からは生活習慣の乱れが体の不調として表れ始め、がんの罹患率も高まる。定期的な健診・検診で、早期発見・早期治療につなげよう。
医師が診断を書き、男性患者に医療処方箋を与える
写真=iStock.com/SARINYAPINNGAM
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健診・検診を受けることは自分への最大の投資。
人生100年時代を生き抜こう

健康診断を正しく受けて健康維持に活用しよう

ビジネスウーマンにとって健康管理は、仕事のパフォーマンスを維持するために欠かせない要素の1つ。食事、睡眠、運動とともに大切なのが定期的に健康診断(以下、健診)や人間ドックなどを受けて、健康状態を把握すること。

会社員なら1年以内に1回、会社が行う健診を受けることができる。これは、事業者が労働者に対して健診を実施することが労働安全衛生法によって義務付けられているため。血液検査や尿検査などの基本的な検査に、がん検診などを組み合わせたメニューが福利厚生によって提供されていることが多い。

一方、個人事業主の場合は、住んでいる自治体の助成が受けられる特定健康診査(メタボ健診)やがん検診、自費(一部の自治体では助成あり)で人間ドックを自発的に受けることになる。しかし、忙しさにかまけて二の次になりがちではないだろうか。

厚生労働省が発表した2014年「国民健康・栄養調査」では、過去1年のうち健診を受けていない女性は約4割にものぼった。本特集では、健診と人間ドックの正しい活用法を専門医に取材。プレジデント ウーマン世代が追加したいオプション検査なども紹介する。

健康診断、受けっぱなしではもったいない
結果には健康寿命を延ばすヒントがいっぱい

生死に関わるがん検診に比べると、血液検査や尿検査などは軽視しがちではないだろうか。生活習慣病を予防するための大切な検査の意味を知り、健康維持に役立てよう。

検査結果は数年の推移と関連項目をチェックする

「定期健康診断」とは血液検査や尿検査、血圧測定といった一般的な検査で、企業に義務付けられているもの。一方、「人間ドック」とは個人の意思で受診できるもので、定期健診の項目に加えて、より多くの臓器を対象とした検査が用意されている。

「人間ドックは1度に全身をチェックできるのがメリット。医師や保健師、管理栄養士といった医療スタッフとの関わりが多く、必要な検査を相談したり、食事指導を受けたりと予防や健康管理に役立てやすい」と三井記念病院総合健診センターセンター長の石坂裕子さんは話す。

いずれも「受けっぱなし」にしないことが大切。異常がないからと、結果をろくに見ずに同じ生活を続けていたら、受診した意味がなくなる。血液検査、尿検査、血圧・体重などの数値はしっかりとチェックしたい。

「大切なのは再検査の項目を放置しないこと。さらに、基準値内だとしても、直近数年の推移と関連項目を併せて見ること。例えば、体重が増えたなら、中性脂肪やLDLコレステロールなどの値もチェック。値が上がっていれば、さらに体重が増えたときに異常値になることが予想できます。医師は数値の推移と項目の組み合わせ、年齢家族歴などからリスクを総合的に読み取ります」

血液検査結果表の見方を解説してもらった。40代女性が気をつけたいのは、ヘモグロビンと血圧、脂質、血糖値だ。

「LDLコレステロールが上がったら肉の脂身、乳製品、洋菓子などの食べすぎに注意を。中性脂肪が上がったら糖質を、血圧が上がったら塩分を控えめに。微妙な数値の変化に気づくことができれば、食事の改善や運動で、変化が見られるはず。結果は必ず確認して、予防に役立てましょう」

「特定健診」とは?
40歳以上75歳未満の人を対象に行う健診を、特定健康診査(特定健診)と呼ぶ。腹囲の測定などが必須となり、メタボリック症候群(内臓脂肪症候群)に特化した検査内容になっているのが特徴。特定健診の結果、生活習慣病の発症リスクが高く、予防効果が期待できる人には、リスクに応じた保健指導(特定保健指導)が実施される。

注目すべきはこの項目!【血液検査結果表の見方】

46歳ライターNの血液検査結果を公開

 

教えてくれた人
石坂裕子(いしざか・ゆうこ)
三井記念病院総合健診センターセンター長
医学博士。日本内科学会認定総合内科専門医。日本循環器学会認定循環器専門医。日本人間ドック学会認定人間ドック健診専門医・指導医。日本医師会認定産業医。

2人に1人ががんになる時代
がん検診オプション検査のすすめ

がんを早期発見・治療するには、がん検診を定期的に受けることが何より大切。人間ドックで用意されている、より精度の高いオプション検査にはどんなメリットが? 選ぶべき検査とは?

毎年受けるがん検診。それで本当に安心できる?

「2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなる時代。仕事が忙しいからと、がん検診を後回しにすることは、死亡リスクを無視しているのと同じこと。かなり危ないことだと認識してほしい」とAGE牧田クリニック院長の牧田善二さんは警鐘を鳴らす。

糖尿病の専門医として年間3000人以上の患者を診ている牧田さん。糖尿病患者はがんの罹患りかん率が高まるため、早期発見できる精度の高いがん検診を患者にすすめているという。しかし、一般的に実施されているがん検診は早期にわかるものもあれば、そうではないものもある。「がん検診を毎年受けているから安心、と考えるのは早計。がんを早期で確実に発見できる、精度の高い検査を選ぶべき」と牧田さんは話す。

国はがん死亡率の減少を目的とした5種類のがん検診を推奨している。胃がん検診(胃部エックス線検査または胃内視鏡検査)、子宮けいがん検診(細胞診)、肺がん検診(胸部エックス線検査および喀痰かくたん細胞診)、乳がん検診(マンモグラフィ)、大腸がん検診(便潜血検査)だ。これらは自治体からの案内で受けられるほか、職場で受ける健診や人間ドックのメニューに含まれることも多い。

がん罹患数の順位(2018年)、がん死亡数の順位(2019年)

図を見ると大腸がんは、女性の罹患数2位、死亡数1位で、ここ50年間で死亡数が約6倍に増えている。大腸がんは早期発見、早期治療でほぼ治癒できるが、便潜血検査では早期のがんを見つけにくいという。

「便潜血検査で陽性反応(出血)があれば内視鏡検査を行いますが、便潜血検査では早期がんが見落とされやすい。はじめから内視鏡検査を行えば早期がんが見つけやすく、ポリープ(大きくなるとがん化しやすい)があればその場で切除できるので、がん予防にもなる。女性は腸の内視鏡検査に心理的抵抗を感じる人も多いですが、ぜひ受けてほしいですね」

その他、近年増えている肺がんも胸部エックス線検査では不十分という。人間ドックでオプション検査として用意されている腹部超音波(エコー)検査も、奥に隠れた臓器のがんを観察しにくい。また、予後の悪い膵臓がん、胆管がん、卵巣がんを早期で見つけるには、技師の技量に左右されるところが大きいという。

必要な検査は全身CT、胃と腸の内視鏡、脳MRI

牧田さんがすすめるのは、毎年行う血液検査や尿検査などの基本的な健診に加え、「全身CT(胸部と腹部CT)」「胃と腸の内視鏡」、「脳MRI」の3つだ。全身CTと胃の内視鏡は毎年、腸の内視鏡はポリープが見つかった場合は毎年、見つからなかった場合は2〜3年に1度。脳のMRIは異常がなければ5年に1度行うことをすすめている。さらに女性なら、被ばくのない乳腺MRIと、子宮と卵巣を見る骨盤MRIも加えれば、完璧に近くなるという。

「将来の認知症が不安な人は、脳MRIと同時に実施できるVSRADという画像診断装置で脳の海馬傍回の萎縮度をチェックするといいでしょう。アルツハイマー型認知症には有効な予防薬があるので、早期診断で予防できます」

牧田さんおすすめの検査、Plus Check
糖尿病専門医・医学博士 牧田善二さん
教えてくれた人
牧田善二(まきた・ぜんじ)
糖尿病専門医・医学博士
AGE牧田クリニック院長。北海道大学医学部卒業。ニューヨークのロックフェラー大学でAGEの研究を行う。久留米大学医学部主任教授などを経て、2003年同クリニックを開設。

プレジデント ウーマン世代にオススメ
気になる部位別【ドック体験ルポ】

健康で働き続けるためには、健診に入っていない部位も要チェック! ダメになると働けない、「脳」と「目」のドックを体験した。

【脳ドック】
40代になったら1度は受診を。
家族に脳疾患歴があれば、必ずチェック!

元気で働き続けるために、「脳」の健康チェックをしよう

「脳」の病気は、内容によっては治療後に長期のリハビリや周囲の助けが必要となるから油断は禁物。

「健康診断で、高血圧や動脈硬化、糖尿病、脂質異常症などのリスクを指摘された人、さらに家族に脳の既往歴がある人は、1度は脳ドックの受診を」と話すのは、脳神経外科専門医であり、菅原クリニック 東京脳ドック院長の伊藤たえさんだ。

「脳の病気は若い人でもなりますが、40代以降でリスクが上昇。脳や脳血管の状態を見て、脳梗塞や脳腫瘍、隠れ脳梗塞の『慢性脳虚血性変化』など危険因子の有無を調べます」

脳の萎縮状態を見れば、認知症のリスクもわかるそう。いずれも早期発見・早期治療で重症化リスクを低減できそうだ。

「問題がなかった人も2〜3年に1度は検査を。高血圧などの放置やアルコールの飲み過ぎは、脳梗塞、脳卒中の引き金になります」

脳ドック体験ルポ
今回体験したのは……
菅原クリニック 東京脳ドック
脳神経外科専門医による「頭痛」や「めまい」「物忘れ」をはじめとする検査・診断、脳ドックのほか、症状をすばやく改善させる治療、将来脳の病気にならないためのアドバイスまでていねいに行う。
●東京都港区赤坂5-2-20 赤坂パークビル2F
☎03-5573-8822 www.tokyo-noudock.jp/

【眼科ドック】
40歳からは目の老化・疾患が顕著に。
緑内障は治りません。早期発見・治療が大切

情報の8割は視覚から。自己投資の1つとして検診を

生活の質を維持するには、目の健康は重要なポイント。「眼科ドック」は耳慣れない言葉ではあるが、どういった人が受けるべきかを、眼科専門医であり、井上眼科グループ理事長の井上賢治さんに伺った。

「人は情報の8割を視覚で得ています。視覚を保つ=生活の質や仕事を維持すること。健康診断の視力検査ではわからない目の状態をチェックし、病気の芽を発見するのが眼科ドックの目的です」

40代になると老眼はもちろん、日本人の中途失明原因の第1位である緑内障をはじめとする目の疾患リスクが高まる。だからこそ、自覚症状がなくても定期的に受診し、早期発見・早期治療につなげるのが理想だという。

「特に緑内障はほとんど自覚症状がないまま進行するため、長い間眼科を受診していない人は1度受診を。1年に1回が理想的です」

眼科ドック体験ルポ
今回体験したのは……
お茶の水・井上眼科クリニック
1881年創立の眼科専門病院。一般眼科外来から「白内障」や「緑内障」などの専門外来、小児眼科外来、コンタクトレンズ外来など、さまざまな目の疾患、年代に対応。最先端治療はもちろん、予防医学の見地からもていねいに診察、アドバイスする。
●東京都千代田区神田駿河台4-3 新お茶の水ビルディング18〜20F
☎03-3295-7735(眼科ドッグ専用) www.inouye-eye.or.jp/clinic/