「イヤよイヤよも好きのうち」?

【Q】彼氏にむりやりキスをされました。断ったのに。相手の同意なくすることは暴力だと思うのですが、どうしたら分からせることができるのでしょうか?

【A】日本語には「イヤよイヤよも好きのうち」というコトバがあります。女は性的に無知で慎み深いから、イエスがはっきり言えない。だからオモテ向きはイヤがってもホンネは違う。そこを察して、押し倒してでも想いを遂げたら、結局女は頬を赤らめて、男の思いどおりになる……って。まあ、いつの時代のことでしょうねえ。いまどき、これだけ性の情報があふれているのに、「性的に無知で慎み深い」女がいるなんて。

「性的に無知で慎み深い」ふりをしている女なら、いるかもしれません。その方が男受けがよい、と思って。なぜそのほうが男受けがよいかといえば、無知な女はコントロールしやすいからです。

わたしの知っている女の子に、男にずっとSMまがいの嗜虐的しぎゃくてきなセックスばかりされている女性がいました。なぜって彼が初めての男だったから、セックスってそんなものだと思って、つらくて苦しかったけど、疑問を抱かなかったんだそうです。

実の父親に性的虐待を受けつづけた娘にも、世の中の父と娘ってこんなことをするもんだと思って、疑問に思わなかったという女性がいます。無知ってこわいですね。

何かイヤなことをされたと思っても、「お母さんには黙ってるんだよ」とか「ふたりだけの秘密だよ、人に言っちゃダメだよ」などと、無知につけこんで言葉たくみにコントロールされ、「おかしい」と思った時には声を出せなくなっていることもあります。事実、性暴力(強姦ごうかん)は、知らないひとより、身近なひとによって起こされる割合が年々増えています。

手順をすっ飛ばしてはいけない

キスは身体接触の関門。恋愛は接近の技術、しだいに距離を縮め、指先が触れ、手を握りあい、抱きしめあい、とても敏感な粘膜である唇を触れあいます。それから先は……と、ものごとには順番があります。

身体に侵入してくる他人はリスク。その他人が少しずつ接近してくるときには、「ここまではいい?」といちいち相手の同意が必要です。ちょうど他人の家に入るときに、ひとつずつかんぬきをはずすように。自分のカラダを他人にゆだねるのですから、安心がなければなりません。それを無理強いされたら、恐怖心や忌避感きひかんが起きるのは当然です。あなたの彼氏はその手順をすっとばしてしまったんですね。

ちなみに、この身体の閂をお金で強引に開けさせて、他人の身体に侵入するのが買春かいしゅんというものです。

施錠
写真=iStock.com/Manivannan Thirugnanasambandam
※写真はイメージです