世の中にマジョリティーをつくってはいけない

企業でダイバーシティや男女平等を進めるには、皆がマイノリティーの立場にある人の思いを理解しておく必要がある。だが、一般的にはそうした立場を経験したことがある男性は少なく、その傾向は立場が上の人ほど強い。

その点、谷内さんは海外赴任先では数少ない日本人の一人として、また子どもの学校行事では唯一の男親として、マイノリティーの立場を経験してきた。企業の風土づくりには、トップにそうした経験があるかどうかも大きく影響するのではないだろうか。

「あらゆる人々のハピネスを実現するには、皆が何かしらマイノリティーの立場を経験したほうがいいのではと思います。今の段階では、男性の育休や家事参加もそうした経験のひとつ。そうすれば、多様性も相互理解も進んでよりよい社会になるはずです。世の中にマジョリティーをつくってはいけない。育休を経験後、より強くそう思うようになりました」

文=辻村洋子

谷内 樹生(たにうち・しげお)
参天製薬 代表取締役社長 兼 最高経営責任者(CEO)

1973年生まれ。96年に立教大学理学部卒業後、参天製薬に入社。2007年、英国ケンブリッジ大学で経営学修士(MBA)取得。参天製薬(中国)有限公司営業本部、アジア事業部などを経て15年より欧州事業を統括。18年、代表取締役社長 兼 最高執行責任者(COO)に就任。その後、約1カ月間の育児休業を取得した。2020年より現職。家族は妻と子ども2人。