27歳で入籍、そこまではすべて計画通りだった

その間、坂梨さんは「30歳までに結婚」を目指し、婚活にもせっせと励んでいたという。

「できれば30歳までに子どもを産みたかったから、27歳くらいで結婚したいという気持ちがありました。プライべートではできるだけ出会いの機会を増やすために、たくさんの人と会うようにしていましたね」

ウェディングブーケ
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結婚相手となれば、やはり自分より稼ぐ力のある人で、尊敬もできて……と狙いを絞る。

「私は人生で欲しいものがそんなにたくさんあるタイプの人間じゃない。では何が大事かと考えたとき、ソファに座って一緒にNetflixの映画やドラマを観られること、おうちデートを楽しめるかどうかがすごく大事ということにたどりつきまして」と声もはずむ。

婚活の末に出会った相手は一緒にいて楽しい相手だ。無事に27歳で入籍。その頃には年収1000万円も達成し、すべて計画通りと思っていたのだが……。

「妊娠は難しい」の診断

結婚したら子どもが欲しいと思っていた坂梨さんは、婚約中にブライダルチェックを受けていた。出産を希望する人が受ける妊娠に関する婦人科系の検査だが、そこで告げられたのは予期せぬ結果。AMH検査(卵巣内に残っている卵子の数の目安を調べるための血液検査)の値が極めて低く、きちんと卵巣が機能していない。「妊娠は難しい」と診断されたのだ。

泣きながら帰る道すがら、不妊治療クリニックへ片端から連絡したが、入籍前では治療できないと断られる。それでも再検査してくれたクリニックでは不妊と断定されず、治療を進めていくことになった。彼も快く不妊治療を受け容れてくれ、入籍するとすぐに開始する。だが、仕事と両立しながら週一回通院するのは、想像以上に厳しかった。

「私は負い目を感じていたので、忙しい夫にはあまり頼りたくなかった。付き添わなくていいし、お金も払わなくてもいいと、毎月何十万円も自分が出していたので給料がほとんど消えることもありました。でも、いつか実を結ぶと信じていたので……」