複雑性PTSDの症状

複雑性PTSDの症状は、先程挙げたPTSDの典型的な症状3つに加えて、さらに3つあります。

1つ目は感情のコントロールが難しくなること。虐待や体罰を繰り返し受け、ずっと怒りを抑えつけられていると、とくに自分のネガティブな感情をうまくコントロールできなくなってしまいます。ささいなことで怒りを爆発させてしまったり、急に感情が麻痺し、茫然として動きがストップしてしまうこともあります。

2つ目は、自分の存在を否定的にとらえてしまうことです。助けを求めても助けてもらえない現状に対して「自分は助けてもらう価値のない人間」と思ったり、「自分のように無価値な人間には生きている意味がない」と思い込んでしまうようになります。

3つ目は、他人を信用しづらくなること。他人と接することに恐怖心を感じ、身近な人にすら不信感を抱きやすくなります。

「適応障害」と言われることも

パワハラや苦手な人間関係によってストレスを抱え続けると、心身の不調があらわわれて、「適応障害」と診断されることもあります。適応障害はうつ病に進んでしまうこともあり、長期の治療が必要です。ただ、適応障害はストレスの原因が明らかで、軽症の段階であればその原因を取り除くだけでも症状は改善します。

しかし、毎日1時間以上罵倒されたり、長期間のセクハラを受けるという異常な体験が何度も繰り返されと、それが自分のなかでの日常になってしまいます。すると、自分がおかしいのか相手がおかしいのか分からなくなり、自分の世界観が揺らいでしまう複雑性PTSDに至ることもあります。フラッシュバックや危険回避行動が目立ち始め、上司に似た人を見るだけで恐怖を感じたり、自分には価値がない人間だと思うようになったりします。

複雑性PTSDの治療は、一筋縄ではいきません。治療を始める時には、安心・安全な環境で行うことが大前提になります。治療は、ある種、パンドラの箱を開けるようなところがあり、トラウマ体験を思い出して症状が強く出てしまう可能性もあります。

薬ひとつで治るものではなく、当事者が病気についての理解を深め、どう対処するのがよいかを学ぶといった、心理教育や精神療法を行いながら進めることになります。トラウマ体験からくる症状を認識したり、感情のコントロールをトレーニングしたりして、他人との信頼関係を構築していくもので、医師だけでなく、ライセンスを持ったカウンセラーも一緒に取り組みます。

暗い寝室に座っている落ち込んだ女性
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