「必要なことをしない」Cさんのいじわる

A子さんのケースに戻りましょう。二人の間にどんなことがあったのでしょうか。

A子さんは外回りの営業の仕事をしています。普段は得意先を回ることも多いのですが、新商品の販路を広げたい会社側は、得意先にこだわらずこれまで取引のなかった会社にも積極的に売り込むようにと指示を出していました。

そんなある日、飛び込みで営業をかけた会社から、商品を買ってもらえることになりました。ここのところ思うように仕事が取れていなかったA子さんは、ホッと胸を撫でおろすと同時に少し得意な気持ちにもなったそうです。

社に戻ると早速、発注係のCさんに商品の発注を依頼しました。

数日後、商品がA子さんの手元に届いてもいいはずの時期なのに商品が入ってきません。

取引先からも催促の電話がかかってきます。焦ったA子さんは、発注係のCさんに商品はいつ入ってくるのかを聞きました。するとびっくりしたことに、Cさんはそんな発注は受けていない、というのです。

そんなはずはありません。A子さんは「確かに、あの日Cさんに発注したはずなのに……」と心の中で思ったそうです。でも口頭での発注だったため、証拠はどこにもありません。Cさんに聞いていないと言われれば、それまでです。A子さんは自分の伝え忘れだったのかもしれない、と思うことにしてその場は引き下がりました。

Cさんが発注を受けていないというからには、ミスの代償はA子さんが払うしかありません。案の定、取引先はA子さんへのクレームと同時にA子さんの上司へも報告してきました。結果、A子さんは自分が新規開拓した取引先の担当から外され、別の社員によって引き継がれることになってしまいました。

ミスの原因もすべて自分に

ようやく新規の顧客を開拓したA子さんは、非常に悔しい思いをしました。

でも、自分がCさんに書面で指示していなかったせいですから、誰を責めることもできません。すべて自分の責任です。そのミスからA子さんのモチベーションはすっかり落ちてしまい、仕事にも身が入らなくなりました。

そんなA子さんを見かねたのでしょうか。A子さんの先輩で同じく営業職の女性から、こんな話を聞かされました。

実はその先輩も、以前にA子さんと同じような目にあったというのです。先輩が営業で取ってきた注文をCさんに発注したところ、何日たっても商品が入らなかった。先輩がCさんに確認すると、彼女は「知らない。聞いていない」の一点張りだったそうです。

先輩は口頭ではなく書面でCさんに発注していたのですが、その書面は紛失していました。ですから発注の証拠はどこにもない。一旦はあきらめかけた先輩でしたが、数カ月後に古いファイルの中から発注書が見つかります。ですがこのときには、ミスの原因はその先輩の伝達ミスだったという結論が下され、すべてが終わったあとでした。

しかし先輩は、Cさんが自分を陥れようとしてわざと紛失したのではないかと疑い始めます。そしてCさんの言動に注意を払っていると、どうやら自分はCさんに嫌われていることに気づいたといいます。