「やられたらやり返す」は絶対NG

大切なのは、相手に恨みの感情を持たないことです。相手が自分を嫌っていることがわかったら、「ならば私だって相手のことを嫌ってやる」という感情を持ってしまいがちですが、そうした気持ちはすぐ捨て去った方がよいでしょう。

見波利幸『平気で他人をいじめる大人たち』(PHP新書)
見波利幸『平気で他人をいじめる大人たち』(PHP新書)

たとえば先ほどのA子さんは、先輩から聞かされたCさんの人を好き嫌いで判断する話を聞いて、とても嫌な気持ちになりました。

そこで「Cさんは嫌な奴だから、仕事で困ってても助けてあげない」「朝、挨拶されても無視してやる」というように、「目には目を、歯には歯を」という具合に報復してしまうと、A子さんの中のネガティブな感情が、増幅されてしまいます。

好き嫌いで人を判断する人は、相手が自分のことを好きか嫌いかに対しても敏感です。したがって自分に向けられたネガティブな感情を敏感に感じ取り、それに触発されて、もっとひどいいじわるをしてくる可能性は大いに考えられますから、相手の感情に乗せられてはいけません。

また「誰からも嫌われたくない」という考えは現実的には不可能ですから、たとえネガティブな感情を持たれたとしても、大きな問題に発展しないうちに自己防衛をしていくしかありません。

自己防衛の方法を具体的に説明しましょう。

「いじわるな人」から自分を守る方法

まずは「世の中には、つまらないことでいじわるをする人がいるのだ」ということを知っておきましょう。その上で、自分はそういう人間にならないように、反面教師にします。

相手とは距離を保ちつつ(プライベートな話はしないなど)、相手を立てていきます。

なぜ、相手を立てるのかというと、相手はあなたに嫉妬しているからです。嫉妬の感情は、自分が下手(したて)に出ることで相手の感情をある程度抑える効果があります。

「○○さんのおかげで業務が滞らず、いつも助かっています。ところでこの間発注した件はどうなりましたでしょうか?」「○○さんは、この件に関しては詳しいと思うんですけど、ここのところはこの方法でやってしまって大丈夫でしょうか?」などのように、相手に配慮し、丁寧に確認作業をしながら付き合っていく、というやり方がいいでしょう。

このように相手への配慮を重ねていくうちに、相手のネガティブな感情も少しずつ薄らいでいくことが期待できます。

見波 利幸(みなみ・としゆき)
日本メンタルヘルス講師認定協会 代表理事

1961年生まれ。大学卒業後、外資系コンピューターメーカーなどを経て、98年に野村総合研究所に入社。主席研究員としてメンタルヘルスの研究調査、研修開発に携わり、日本のメンタルヘルス研修の草分けとして活躍。2015年より日本メンタルヘルス講師認定協会の代表理事に就任。20年かけて開発した2日間の「ヒューマンスキルを強化するマネジメント研修」は大企業を中心に絶大な支持を得ている。著書に『心が折れる職場』『上司が壊す職場』(以上、日経プレミアシリーズ)など多数。