「男らしい」生き方から降りてみる

つまり男性は、活躍する女性の足を引っ張るような行動をやめて、むしろ活躍を後押しするようにすれば、自分も楽になるはずなのです。「男だから」と仕事中心の生活に固執したり、女性活躍に対して被害者意識を持つようでは、人生はずっと大変なままですからむしろ損だと思います。

男性には、少し価値観をずらして自分の生き方を見つめ直してみることをおすすめします。現状では、「大黒柱であらねば」「競争に勝たねば」がクセになっている人が多いようです。

まずは、こうした「男らしい」生き方から降りることを考えてみてはどうでしょうか。一度立ち止まって仕事中心の生活に疑問を持ってみれば、自分はどんな生活や生き方を楽だと感じるのか、きっと見えてくると思います。

僕は人生の途中で、自分には自分のペースで働くのが向いているのだと気づきました。それまでは成功している人と比べて、同じペースでやろうと頑張ったりもしていました。でも、あるときふと、自分の場合はそのやり方では成果が上がらないと気づいたのです。

考えてみれば、能力も経歴も違う人と自分を比べても意味がありません。この気づき以降、僕は仕事にマイペースで取り組めるようになり、同時に人生を楽に感じられるようになりました。

男性が“大黒柱の重責”から降りやすい社会へ

女性活躍に被害者意識を持ったり、昇進した人をやっかんだりする人は、他人と比べることで自分の価値を測るクセがついているのではと思います。自分の基準で自分をほめたり、自分で自分を充足させたりすることができない。それは人生にとって大きな損失です。

日本の男性の多くが、働き続け勝ち続けることに疑問を持たないのは、そう育てられてきたからでもあります。だからこそ今、そうした生き方が本当に自分に合っているのかどうか考え、必要なら降りることも検討してみてほしいと思います。

活躍を望む女性がごく普通に活躍でき、働き続けられる社会になれば、男性も大黒柱という重責から降りやすくなるはずです。どうすればどちらも楽になれるかという視点で議論を重ねて、皆が自分に合った生き方を見つけられる社会、望むように生きられる社会を目指したいものです。

構成=辻村洋子

田中 俊之(たなか・としゆき)
大妻女子大学人間関係学部准教授、プレジデント総合研究所派遣講師

1975年、東京都生まれ。博士(社会学)。2022年より現職。男性だからこそ抱える問題に着目した「男性学」研究の第一人者として各メディアで活躍するほか、行政機関などにおいて男女共同参画社会の推進に取り組む。近著に、『男子が10代のうちに考えておきたいこと』(岩波書店)など。