男女平等を推進しようという取り組みに対して「逆差別だ」という意見は少なくありません。男性学の研究者・田中俊之さんは「そのように反発する男性は、自分の生き方を大変だと感じているからではないでしょうか。男は働き続け、勝ち続けねばならないから大変だと。それなら、その生き方から一度降りてみればいいのにと思います」といいます――。
壁に手をついてうつむく男性
写真=iStock.com/KatarzynaBialasiewicz
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根本的な勘違い

近年、男女不平等を是正しようと、各企業で女性活躍推進の取り組みが行われています。しかし、こうした議論が行われると必ず「男性への逆差別ではないか」という意見が出てきます。一体なぜなのでしょうか。

以前の記事「妊婦の優先接種に自宅療養…『最悪の事態』が起きないと何も動かない根本原因」でも触れましたが、世の中には現状の男女不平等を「デフォルト(初期設定)」だと思っている男性たちがいます。彼らは、男女間に賃金格差があるのも、家事育児負担が女性に偏っているのも、不平等ではなく普通の状態だと捉えています。

その根底にあるのは、男性と女性は本質的に違うのだという考え方です。だから、それぞれの役割を分けて考えることは区別であって差別ではないというわけです。

“日常”が揺らぐことへの不安と反発

彼らにとっては男女不平等な現状が日常ですから、これが揺らぐとなると不安や反発を感じます。自分にとっての日常を無理やり変えさせられることに、被害者意識を持ってしまうことさえあります。「女性活躍推進は男性への逆差別」という意見は、こうした意識から出ているのではないかと思います。

男性は女性と比較すると、性別によって生き方が左右される経験が乏しいです。たいていの人は当然のように総合職として採用され、その後は仕事中心の生活をし、このままずっと定年まで働き続けるものだと思っています。そして、競争に勝つために、他人より上を目指して頑張るのが「普通」だと考えています。