あなたが忙しくても、まわりの人は忙しくない

この場合、問題なのは「迷惑をかけられている」と感じる気持ちのほうです。苛立つとしたら、じつはその人は、自分のことしか考えていないのです。

アルボムッレ・スマナサーラ『心は病気:悩みを突き抜けて幸福を育てる法』(河出書房新社)
アルボムッレ・スマナサーラ『心は病気:悩みを突き抜けて幸福を育てる法』(河出書房新社)

スピードが遅い人もいて当たり前なのに、「世の中は、自分のために回ってほしい。私は忙しいんだから、あなたがたもそれに合わせて急ぎなさい、忙しくしなさい」という態度なのですね。

でも他人から見れば、あなたが勝手に何を思おうと、まったく関係ありません。切符を買うために長々と説明している人も、切符を売っているJRの人も、並んで待っているあなたがどんなに忙しかろうと、知ったことではありません。ほかの人はべつに忙しくありません。

丁寧な態度でミスのないように確実に仕事をこなしているだけかもしれません。

まず、それを理解してください。そうすれば、自分がいかに自分勝手にいろいろなことを考えているか、見えてくるはずです。

自分のことをしっかりしていれば、それで十分

人間には、誰にも迷惑をかけないで生きることはできません。そもそも生きること自体が、かなり迷惑な行為です。1日の食事のためにどれくらいの命がなくなっているのか、考えたことがありますか?

ですから、「私が他人にかける迷惑は最小限にするぞ」と決めて、努力するしかないのです。

何をするにしても、自分がしっかりしていれば問題ありません。電車やバスに乗る場合なら、「この時間でこの電車に乗りたいから、切符をください」とさっと言えば、なんのことなく、すぐに切符が出てくるのです。

搭乗ゲートに並ぶ人の列
写真=iStock.com/izusek
※写真はイメージです

金額を調べて用意しておけば、もっと早いですね。私がバスに乗るときも、お金は最初から用意しておきます。たいていは前に並んでいるのがお年寄りたちですからどうせ遅いのですが、自分のときはほんの2、3秒でさっと中に入ります。でも、だいたいの人は、そんなことしませんね。問題は、ほとんど自分の側にあります。

他人に文句を言う前に、まず「私はどうか? 人に迷惑をかけないように、きちんとしているだろうか?」と考えてみてください。

まず頭をしっかりさせるのです。他人のことは、自分にはどうしようもありません。自分にできるのは、自分のことだけです。だから自分のことをしっかりしていれば、それで十分です。

アルボムッレ・スマナサーラ(Alubomulle Sumanasara)
スリランカ上座仏教長老

1945年、スリランカ生まれ。13歳で出家得度。国立ケラニヤ大学で仏教哲学の教鞭をとる。80年に来日。駒澤大学大学院博士課程を経て、現在は日本テーラワーダ仏教協会で初期仏教の伝道と瞑想指導に従事。ベストセラー『怒らないこと』『バカの理由』ほか著書多数。右の写真は、釈迦牟尼(ブッダ)の身体から発したとされる後光の色を配した「五色の仏教旗」。