伸びる人は仮説を重視するが、凡人は行き当たりばったり

優秀な人は「仮説思考」が習慣になっています。

仮説思考とは、「いまある情報の中から、一番可能性の高い結論を想定し、それを最終目的地として意識しながら検証を繰り返し、仮説の精度を上げていく」というのが学術的な表現ですが、一言でいうと、「とりあえず答えを出してみる」ことです。

こんな話があります。

あなたは仕事で疲れた帰り、バス停でバスを長時間待っているとします。長い間待っていたバスがやっと来たが、なんと超満員。

あなたはこう考えます。「目的地まで1時間も立ちっぱなしのすし詰め状態はイヤだ。疲れているので何とかして座りたいが、次のバスも混んでいたらどうしよう。」

このバスに乗るか、それとも、次のバスを待つか……。もし急ぎの用事でもなければ、きっとあなたは次のバスを待つのではないでしょうか。それはなぜか?

バスは一定の時間間隔を置いて走るが、先のバスが人を多く乗せれば、それだけ遅れが出る。しかし次のバスは、前のバスが乗客を拾っているので停車時間が短くなり、その分、早く走れる。そうやってバス間の距離は縮まり、最後は団子状態になって走ることがあります。

だから次のバスはもう間もなく来るはずで、このバスが満員なら、次のバスは比較的空いているだろうと仮説を立てて「次のバスを待とう」という結論を出すのです(ちなみに現在はGPSの位置情報でバスの運行管理がされているため、都市部ではこのようなことはほとんど起こりません)。

限られた時間と情報で正しい判断ができる

仮説思考の最大のメリットは、限られた時間と情報の中からでも、より適切な答えが見つかるようになることです。

「こうすればこうなるかもしれない→やってみる→結果はこうなった→その理由はきっとこうだろう→次からはこうしてみよう」の繰り返しを、日常生活の中で多頻度回転させると、「こういう場合はこうなる」「こうすればこうなる」というパターンの引き出しが増えていき、未知の場面に遭遇しても、応用して適切な対処ができるようになります。

いわゆる「経営者のカン」もこれに似たところがあります。

反対に、凡人に限って何の仮説も持たず、ただ行き当たりばったりでコトに当たります。天気予報を見ないから丸腰で外出し、雨に降られて駅の売店でビニール傘を買う。25日に銀行のATMの行列に並ぶ。根拠もなく自分のカンを信じる。

仮説がなければやみくもに情報収集や分析をして、網羅的になりがちです。もちろん、情報収集や分析から新しい仮説が生まれることもあるとはいえ、やはり時間がかかるし無駄も多くなるもの。

それに、仮にその仮説が間違っていても、「なぜだろう? 次はどうすればよいだろう?」と考えることで、より精度の高い仮説構築ができるようになり、次からはもっと短時間でできるようになります。

午堂 登紀雄(ごどう・ときお)
米国公認会計士

1971年岡山県生まれ。中央大学経済学部卒業後、会計事務所、コンビニエンスストアチェーンを経て、世界的な戦略系経営コンサルティングファームであるアーサー・D・リトルで経営コンサルタントとして活躍。IT・情報通信・流通業などの経営戦略立案および企業変革プロジェクトに従事。本業のかたわら不動産投資を開始、独立後に株式会社プレミアム・インベストメント&パートナーズ、株式会社エデュビジョンを設立し、不動産投資コンサルティング事業、ビジネスマッチング事業、教育事業などを手掛ける。現在は起業家、個人投資家、ビジネス書作家、講演家として活動している。著書に『33歳で資産3億円をつくった私の方法』(三笠書房)、『決定版 年収1億を稼ぐ人、年収300万で終わる人』(Gakken)、『「いい人」をやめれば人生はうまくいく』(日本実業出版社)、『お金の才能』『お金の壁の乗り越え方 50歳から人生を大逆転させる』(かんき出版)など。