ようやく評価できる少子化対策が出てきた

十何年も前から懸念されていた少子化について、行政も手をこまぬいていたわけではありません。ところが、前・安倍政権の子育て支援にしても「三世代同居」の推進など的外れなものばかり。ようは「公的にお金を出すつもりはありませんから、家庭で保育してください」「おじいちゃん、おばあちゃんが孫の面倒を見るから、旦那さんは外に働きに出てください」ってメッセージですからね。いやいや、母親はどうするんですか? 仕事に育児に介護ですか? という話です。

その点、今年6月に改正された「改正育児・介護休業法」は評価できます。来年4月から始まる新制度では、男性が取得しやすい「出生児育児休業」が新設されたほか、大企業や中小企業に関わらず、すべての事業主に対し、従業員への通知と育児休暇取得の促進が義務づけられました。つまり、罰則規定はないものの、雇用主に対して男女を問わず育児休暇を取りやすい環境をつくるよう法的に定められたわけです。

これまでは取得率、日数ともに“申し訳程度”だった

そもそも「育児休暇」は法律改正以前も、男女を問わず取得できるものでした。ところが改正前の男性の育休取得率は7.48%(厚生労働省「令和元年度雇用均等基本調査」)に過ぎず、女性の83.0%を大きく下回っていました。また、実際に男性の正社員が取得した育休日数は3日以内(43.1%)、次いで4~7日(25.8%)と申しわけ程度の日数にとどまっていました(厚生労働省委託事業「平成29年度仕事と育児の両立に関する実態把握のための調査研究事業報告書」)。

こうした様々な調査から、男性が育休を取らない背景に、「会社に男性育休の制度がない」「収入を減らしたくなかった」「職場が育休を取りにくい雰囲気だった」など、有形無形の障害があることが浮かび上がり、今回の法改正の柱である「雇用側の義務化」に結びついたのです。

今年の秋には改正育児・介護休業法のもとで、父親が生後8週までに、最大4週間を2回にわけて「産休」、いわゆる「男性育休」を取れる制度の新設が予定されています。別枠でさらに2回取得できるので、出生直後の一番大変な時期に柔軟に対応できるようになるでしょう。さらに従業員が1001人以上の企業には、2023年4月から男性の育休取得率の公表が義務づけられるため、男性の育休取得はさらに加速しそうです。