6月に「育児・介護休業法」が改正され、男性が育休をとりやすくなりました。産婦人科医の宋美玄さんは「やっと建設的な少子化対策が出てきた」と評価する一方、取得を推進するだけでは不十分と指摘します――。
明るい部屋で赤ちゃんの手を握る母親
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コロナ以前から少子化は加速していた

今年6月、主要な新聞に「少子化加速」「出生数80万人割れ現実味」などの見出しが並びました。6月4日に厚生労働省が発表した人口動態統計(概数)で、令和2年生まれの子どもの数が84万832人と過去最少だったためです。コロナ禍の影響を指摘する声もありましたが、およそ10カ月の妊娠期間を考えると、2020年の出生数に対するコロナ禍の影響はほとんどありません。コロナ以前に、日本は出産が減る段階に入っていたのです。

なぜかといえば、団塊ジュニア世代を「就職氷河期」が直撃した結果、第三次ベビーブームを引っ張るはずだった彼らが、経済的な問題で「結婚できない」「結婚しても子どもを産み、育てることができない」状況におちいってしまったから――。

就職氷河期に仕込まれた「人口時限爆弾」が爆発しただけ

それでも団塊ジュニア世代が現役の生殖年齢だった2016年頃までは、出生数もかろうじて100万人台を維持していました。しかし、その団塊世代もすでに50~46歳と、生殖ラインからは引退する時期です。第三次ベビーブームは幻におわり、今後、出生数が自然に上向く要素は全くないといっていいでしょう。2021年の出生数は80万人を切るのでは、と今さらのように騒がれていますが、何のことはない、だいぶ前に仕込まれていた人口時限爆弾がぼかんぼかん爆発しているだけのなのです。

コロナ禍が少子化に拍車をかけるかどうかは、今後の人口動態統計をみていかないとわかりません。参考に先日、厚生労働省が公表したデータをみると、今年1月の出生数は5万7574人で、昨年の1月の6万8151人から1万人以上、減少していました。ちょうど昨年4月の緊急事態宣言の時期――、いちばん皆でがんばって自粛を守っていた時期の影響が出ていると考えられます。

なかには「自粛で家に引きこもるから、夫婦間のコミュニケーションが増えて出生数も上昇する」だの御託を並べている方もいましたが、雇用は不安定になるわ、先行きは見えないわ、まして、育児環境も整わないなかでホイホイ産めるわけがない。その後、少し持ち直しているようにも見えるものの、コロナ禍がプラスになるとはとても思えません。