我慢して痩せたのに水の泡……。ダイエットをする人の多くが経験したことがあるのではないでしょうか。生活習慣病の専門医である牧田善二さんは「人の脳はリバウンドするようにできている」と言います。ではどうしたらリバウンドを避けられるのでしょうか――。

※本稿は、牧田善二『医者が教えるダイエット 最強の教科書 20万人を診てわかった医学的に正しいやせ方』(ダイヤモンド社)の一部を再編集したものです。

炭酸飲料
写真=iStock.com/subjug
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人間の脳はリバウンドするようにできている

ダイエットにはリバウンドがつきものです。多くの人がダイエットに挑んではリバウンドし、そのたびにかえって太るということを繰り返しています。

それにしても、なぜリバウンドしてしまうのでしょうか。

その答えは、「人間の脳は、ダイエットに失敗してリバウンドするようにできているから」です。

その仕組みについて、簡単に説明しましょう。

私たちの命を繫ぐためには、エネルギーが必要です。そして、エネルギー源となるのは炭水化物(糖質)です。だから、人類は生まれながらにして「炭水化物を摂取するように」プログラミングされています。

しばらく炭水化物を摂らないでいると、血糖値が下がってイライラしてきます。このとき、脳の指令によって猛烈に炭水化物を食べたくなります。

そして、食べれば脳の「報酬系」が働き、ドーパミンというホルモンが出て幸せを感じるようになっています。

「ああ、美味しい。幸せ」と。

この幸福感を得たくて、人類はせっせと炭水化物を食べ、エネルギー枯渇を防ぎ、命を繫いできたのです。

ただ、ここで忘れてはならないのは、そうしたプログラムが完成したのは、はるか昔の旧石器時代だということです。

旧石器時代にできた「脳が幸せを感じる仕組み」

旧石器時代には農耕の技術はなく、人々は狩猟や採集で食べ物を得ていました。そこには、エネルギーとなる炭水化物はあまり含まれておらず、それゆえに、いくら食べても食べ過ぎにはなりませんでした。そういう時代が数百万年も続きました。

ところが、約1万~2万年前に農耕生活が開始され、小麦などの炭水化物を栽培し、かつ保存ができるようになりました。

それでも、「潤沢に」と言うにはほど遠かったでしょう。一部の特権階級を除いては飢えとの闘いが続いていたはずですから、やはり過剰なほどの炭水化物は摂れなかったはずです。だから、一般人は肥満とは無縁でした。

しかしながら、現代社会は「いくらでも摂れる」状態です。しかも、炭水化物はほかの食品に比べて安価です。さらに、糖質制限など行おうものなら、脳から「なにをやっているんだ。早く炭水化物を食べなさい」という指令がどんどん出されます。それに従って食べれば、「ああ、やっぱり美味しい。幸せ」となります。

ちなみに、薬物依存の人が、ダメだとわかっていながら薬物に手を出すのは、「ハイになりたいから」ではありません。薬物が切れた苦しい状態から抜けて、正常なレベルまで調子を取り戻したいからです。

極端な肥満者の場合、これと同じ状況で、糖質を摂らないと落ち着かずに憂鬱に感じられ、そこから脱出したくて食べてしまうという、ひどい依存症に陥っているのです。

こういう状況だから、リバウンドしてしまうのも当然です。