伝えたいことを「松竹梅」にレベル分けする

こうした職務経歴書なら、採用担当者は「この人は何ができる人なのか」を類推しやすくなります。こんな商品をつくった、上司から高い評価を得たというようなおおざっぱな書き方では、プロジェクトでの役割や貢献度がいまひとつ伝わりません。ビフォーアフターを意識しながら、ぜひ具体的に書くよう心がけてほしいと思います。

とはいえ、あまり長くなるのは避けたいもの。40代の方の経歴を3〜4枚程度に収めるには、かなりはしょらなくてはなりませんが、その際には、伝えるべきことまで削ってしまわないように注意してください。

まずは自分が伝えたいことを書き出し、それらを松竹梅にレベル分けしてみてはどうでしょうか。一つひとつ に自分なりに重みづけをして優先順位を決め、職務経歴書と面接のどちらで伝えるかを仕分けていくのです。

その際には、志望先の企業のニーズや、ライバルとなる他の応募者の傾向も想像するよう心がけましょう。このあたりは企業によって変わってくるでしょうから、A社で「梅」にしていた事柄をB社では「松」に持ってくるなど、柔軟な対応も必要です。

1つのパターンで押し通さない

転職活動では、自分をPRできる機会は限られています。限られた紙面や面接時間の中で自分の経験をどう編集しどう伝えるか、これはとても重要なポイントです。

年齢を重ねた人は若い人より経歴は長くなりますが、採用担当者が職務経歴書の精査にかける時間や面接時間まで長くなるわけではありません。「伝えるべきことが多いのに不利だ」と感じるかもしれませんが、ここは経験からくる編集力や想像力の見せどころでもあります。

繰り返しになりますが、職務経歴書は、単に自分の経歴を伝えるためのものではありません。「私はこういう経歴を持っているので採用してください」という考え方で書かないことです。経歴を、「貴社にどう貢献できるか」の裏づけとして上手に語っていただきたいと思います。

志望先のニーズや、他の応募者(つまり競争相手)を想像できる人は、相手企業に合わせて何パターンもの職務経歴書をつくることも少なくありません。1つのパターンで押し通すのではなく、相手企業や採用担当者の目線に立って柔軟な対応を。想像力をもって実績や経験をきちんと伝えることができれば、採用担当者の目に留まる確率も高まるはずです。

構成=辻村 洋子

黒田 真行(くろだ・まさゆき)
転職コンサルタント、ルーセントドアーズ代表取締役

1988年、リクルート入社。2006~13年まで転職サイト「リクナビNEXT」編集長。2014年ルーセントドアーズを設立、成長企業のための「社長の右腕」次世代リーダー採用支援サービスを開始。35歳からの転職支援サービス「Career Release 40」、ミドル・シニア世代のためのキャリア相談特化型サービス「CanWill」を運営している。著書に『転職に向いている人 転職してはいけない人』『35歳からの後悔しない転職ノート』『採用100年史から読む 人材業界の未来シナリオ』など。