学生は「バイアスを持つ企業は選ばない」姿勢を

就活セクシズムはどうすればなくしていけるのでしょうか。大学の講師選びや企業の新卒採用への意識のほか、もうひとつ変えるべきポイントがあります。それは就活の当人である学生の意識です。

優秀な学生には、「ジェンダーバイアスを持った企業は選ばない」という姿勢で就活に臨んでほしいと思います。その部分について企業がどんな意識を持っているかは、ダイバーシティ施策や女性活躍の実現度を見ればわかるでしょう。

そうした点をチェックせずに「有名企業だから」「仕事内容が好きだから」という理由だけで入社したら、女子学生は将来のキャリアを伸ばせないかもしれません。男子学生にとってもひとごとではなく、育休をとる際に嫌がらせに遭ったり昇進に影響が出たりする可能性もあります。

学生がこうした態度で就活に臨めば、ジェンダーバイアスを持った企業や多様性のない企業は優秀な人材を採用できなくなり、変わっていかざるをえなくなるのではと思います。

急速に変えるのは難しくても、変化のきざしはすでに現れ始めています。男女別の就活スタイルを押しつけるような話題には必ずカウンターの意見が出てきていますから、さまざまな視点から議論できる状況になりつつあるのは間違いありません。この変化の芽をさらに育てて、日本におけるジェンダーバイアスの解消につなげていきたいと思います。

構成=辻村洋子

田中 俊之(たなか・としゆき)
大妻女子大学人間関係学部准教授、プレジデント総合研究所派遣講師

1975年、東京都生まれ。博士(社会学)。2022年より現職。男性だからこそ抱える問題に着目した「男性学」研究の第一人者として各メディアで活躍するほか、行政機関などにおいて男女共同参画社会の推進に取り組む。近著に、『男子が10代のうちに考えておきたいこと』(岩波書店)など。