教壇に立たせてはいけない人たち

ここまで、就活セクシズムが加速した原因として2つの要素を挙げてきました。このうち、新卒一括採用や採用基準は企業の変化に期待するしかありませんが、キャリア教育の講師選びについては各大学で変えていくことができます。

最も大事なのは、「ジェンダーバイアスのかたまりのような人は選ばない」ということです。マナー講師の中には、リクルートスーツや面接マナーを極端に男女に二元化して語り、特に女子学生に対しては非常に多くのことを要求する人がいます。

メイクや髪型はもちろん、スカート丈やヒールの高さに至るまで「望ましいスタイル」があると指導する──。男女に二元化したり、女子学生への要求項目が男子より多かったりといったことだけでもすでに問題ですが、さらに問題なのは、女子学生への指導内容には共通して「女性は美しく控えめであるべき」という思い込みが見られることです。

自身がそのやり方で成功してきたという経験があるからなのかもしれませんが、こうしたバイアスを持った人を教壇に立たせるべきではありません。人に何かを教えようと思ったらいちばん大事なのは講師選びで、これは企業研修でも同じです。確かに、男性はこう、女性はこうという二元論は受講者からの受けはいいかもしれません。わかりやすいですし、そういうものだと聞けばそれ以上考えなくて済むからです。しかし、だからこそジェンダーバイアスを持った人を先生にしてはいけないのです。

学問は仕事や就職に役立てるために学ぶのではない

大学のキャリア教育自体は、なくすことはできないでしょう。今はオープンキャンパスの時点で、学生も保護者も「卒業したらどんな職に就けるのか」「大学側はその可能性をどう高めてくれるのか」といったことを知りたがります。キャリア教育の授業で就活マニュアル的な話が多くなるのも、こうしたニーズに応えなければならないからです。

教員としては、この状況に寂しい気持ちもあります。そもそも学問は、仕事や就職に役立てるために学ぶものではありません。私としては、学問を通して自分の頭で考える力を育成しているつもりなので、学生がその力を身につけて、いつか役立ててくれたらいいなと願うばかりです。