「男子は算数、女子は国語が得意」「男子は後伸びするから今からでも難関校を狙える」。受験塾の先生からそんな話を聞いて、モヤモヤしたことがある人もいるのではないだろうか。大妻女子大学准教授の田中俊之さんは「平均値の話をさも全員にあてはまるかのように話し、それを前提に指導しているなら、大きな問題だ」という――。
教室で勉強する女子小学生
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性差より個人差のほうが大きい

小中学生を対象とした受験塾では、しばしば男子はこう、女子はこうといった決めつけの言葉が聞かれるといいます。よくあるのが「女子より男子のほうが算数が得意」というもので、「先生が言うならそうなのかな」と納得してしまう親御さんも多いようです。

しかし、得意不得意は性差より個人差のほうが大きい問題です。たとえば徒競走のタイムを考えてみてください。平均値は男子のほうが上でしょうが、女子の中には男子より速い子もいるはずです。平均値はあくまでも平均値で、すべての子に当てはまるものではありません。

「男子のほうが算数が得意」も、本来は「平均すればそうである」という話なのにもかかわらず、どの子にも当てはまる事実であるかのように話してしまう、あるいは思い込んでしまうところに問題があります。

「性別あるある説」は腹落ちしやすい

個人的には、平均値で男女の違いを語る塾の先生は、そうすることで親の納得感を得ようとしているのではないかと感じます。人は、男子はこう、女子はこうと単純化された話に納得しやすいものです。特に、それが自身のジェンダー観と合っている場合や、自分に役立つ情報をすぐ得たいと思っている場合ほど飛びつきがちです。

性別という属性は、わかりやすい「あるある説」を唱えるときの象徴的存在でもあります。場をコントロールしたり人を管理したりするために性別で分ける、あるいはこの性別はこうであると決めつける。そうした事例は塾に限らずほかにもたくさんあります。性別ごとにくくる語り方は、今もまだ多くの人が腹落ちしやすいということでしょう。