算数の問題に難易度の差

また、中学受験の算数問題は、共学校や女子校よりも男子校のほうが難しいと言われています。ここにも「男子のほうが算数が得意」という思い込みや、「男子だから将来は理系に進んでほしい」という期待が潜んでいるように感じます。

性別によって算数問題の難易度に差があることにモヤモヤを感じたら、親としては「そういう学校には行かせない」という選択をとることもできます。男子校ではなく共学という選択肢もあるわけですし、モヤモヤを感じる親御さんが増えればそうした学校は生徒を集めにくくなっていく可能性もあります。

ただ、こうした男子校は進学実績が高いのも事実です。男の子だから難関大学に行かせたいと願う親が一定数いる以上、人気もそう簡単には落ちないでしょう。長期的に見ればともかく、短期的にはこの傾向はなかなか変わらないと思います。

教科書をなぞる指先
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子どもが「あるある説」を信じてしまわないように

では、塾や学校にジェンダーバイアスを感じた場合、親はどんな姿勢でいるのが望ましいのでしょうか。性別にからむ俗説のようなものはたくさんありますが、まずは鵜呑みにしないことが大事です。子どもまでそれを信じてしまわないように、大人には現象の背景や裏の原因まで考えることが求められると思います。

能力や適性に関する問題は、性別ごとの平均値がどうであるかにかかわらず、個人個人の違いとして考えていくべきです。決めつけを感じたら簡単に納得せず、背景や原因を考えてみてください。それが、性別による決めつけの「あるある説」を社会からなくしていくことにつながっていきます。

そして、子どもの受験や進路について考えるときは、性別や決めつけるような言葉に惑わされず、わが子はどうなのかと考えるようにしてほしいと思います。頭から「うちの子は平均に当てはまる」と信じ込むことなく、その子の得意なことや興味関心ごと、ペースなどをしっかり見極めてあげてください。

構成=辻村洋子

田中 俊之(たなか・としゆき)
大妻女子大学人間関係学部准教授、プレジデント総合研究所派遣講師

1975年、東京都生まれ。博士(社会学)。2022年より現職。男性だからこそ抱える問題に着目した「男性学」研究の第一人者として各メディアで活躍するほか、行政機関などにおいて男女共同参画社会の推進に取り組む。近著に、『男子が10代のうちに考えておきたいこと』(岩波書店)など。