アメリカと中国の間で日本はどうふるまうか

今回のG7で世界の対立状況は結局、海VS.陸であることがわかったわけですが、不都合なことに日本は陸のスターである中国と貿易をしなければなりません。中国には人権や倫理などの問題があって、アメリカからは中国とビジネスをするのは許さんぞという圧があるとはいえ、現実的には中国とのビジネスの割合は大きいし、まだまだ伸びしろがあります。

ですから今後、日本は「安全はアメリカ」「商売は中国」という間で、股裂き状態になってしまう恐れがあります。というか、まさに今、そういった大きなジレンマに直面していると言えるでしょう。

中国および日本の海域に米国船も向かっている
写真=iStock.com/pengpeng
※写真はイメージです

識者の多くが、日本はアメリカと中国の間をとりもって、うまく立ち回らなくてはいけないと言います。確かにそのとおりですし、それができたら理想ですが、では具体的にどうやってやるのか、どうしたら中国を穏健化させられるのか、その質問には、誰も答えていません。僕自身もその答えは持っていません。

もちろんアメリカと中国は喧嘩をしないようにするべきですが、日本にそれを仲裁する力はありません。アメリカと中国という両横綱の行司になる力が日本にはない。ですから日本は、基本的にその場、その場でやっていくしかないのです。

僕が恐れているのは、あるところまでいくと「お前はどっちを選ぶんだ」とアメリカから詰め寄られて、年貢の納め時がくること。そのときに中国でまだいけるんじゃないかという人がいたり、いや、安全保障が大事だろうという人がいたり、国論が割れてしまうのではないかという懸念があります。

ただ、これは日本側だけの問題ではないので、何ともしようがない。今の日本の外交の無力感といってもいいかもしれません。

われわれ個人としては、政府にうまくやってくれよと頼みつつ、経済的には独立して、いざというときに備えるべきなのでしょうね。

奥山 真司(おくやま・まさし)
地政学・戦略学者

戦略学Ph.D.(Strategic Studies)国際地政学研究所上席研究員。カナダ・ブリティッシュ・コロンビア大学卒業後、英国レディング大学院で、戦略学の第一人者コリン・グレイ博士に師事。近著に『サクッとわかるビジネス教養 地政学』(新星出版社)がある。