会社としっかり距離を置く

患者さんが休職したときは、僕たち産業医も休み始めから復帰まで会社と連携をとっていくことになります。

休みに入るときは、基本的に会社から与えられているパソコンやスマホは引き上げて、職場からは距離を取ってもらいます。患者さんがしっかりと休みのスタートを切れるように、会社には2つのお願いをします。ひとつは、会社からの電話連絡はやめてほしいということ。やむを得ない仕事の問い合わせや、さまざまな手続きなどで、会社から本人に連絡をせざるを得ない場合はありますが、電話ではなく、メールか郵送にしてくださいと頼みます。

もうひとつは、会社とのやりとりの窓口を一本化することです。社内のさまざまな人からあれこれ連絡がきては、全く休みになりませんので、絶対にやめてほしいとお願いしています。

復職先をどう選ぶか

いざ復帰するときは、適応障害など原因がはっきりしている場合は、配置転換をお願いしますが、うつ病など原因が特定しにくい場合は、新しいところに行くと、新しい人間関係や職場環境、仕事内容に慣れなくてはならず、かえってストレスになるため、基本的に前にいたところに戻してもらうようにします。慣れている仕事から再スタートするのが一般的です。

今はコロナ禍による在宅勤務が増えて、月曜日から金曜日まで通う体力がなくても復帰できるようになりました。とはいえ、「在宅勤務=軽減業務」ではありません。そこに気をつけながら、自分のペースで仕事ができれば、在宅勤務から復帰していくのもありでしょうね。

ただ、「メンタルの不調から復帰したばかりの人を、上司や同僚から目が届きにくい在宅勤務にさせてもいいのか、管理ができなくてこわい」と、あえて出社させる会社もあります。そこは会社の考え方次第です。

最近は、どこの会社もメンタル不調に関する理解がすすみ、患者さんに合う方法を前向きに考えてくれるところが増えてきたのはいいことだと思います。

構成=池田純子

井上 智介(いのうえ・ともすけ)
産業医・精神科医

産業医・精神科医・健診医として活動中。産業医としては毎月30社以上を訪問し、精神科医としては外来でうつ病をはじめとする精神疾患の治療にあたっている。ブログやTwitterでも積極的に情報発信している。「プレジデントオンライン」で連載中。