スローなキャリアを歩む選択肢がある

【江川】当社では、それは女性より若者の傾向と言えそうです。最近の若い社員の中には、昇進の時期になっても上がりたがらない、スローなキャリアを望む人が一定数いるんですよ。男女関係なく、「仕事よりも、趣味や家庭に力を注ぎたい」など、自分のペースでキャリアを築いていきたいと望む人が一定数います。それはそれでまったく問題ありません。当社には、早い昇進を望む人にもそうでない人にも、それぞれ適した職種があるからです。

前者の典型的な職種は戦略コンサルタントで、お客様自身でも気づいていないような課題や中長期的な視点も含めて経営判断のお手伝いをしますから、求められる課題も大きい分、成長も早い。一方、お客様の業務プロセスを請け負うような職種は勤務時間が基本9時から6時まで。仕事では、決められたことを手順通りきちんとやることが重視されます。

ひと昔前は「Up or Out」の世界だった

【白河】働き方や昇進の仕方に、男女ともバラエティーがあるのは画期的です。でも実際のところ、スローなキャリアを歩みたがる人を軽く見るような風潮はないのでしょうか? 特に男性がそうだと「男なのに昇進をあきらめちゃって」などと言われそうです。

ジャーナリスト 白河桃子さん
ジャーナリスト 白河桃子さん(撮影=干川 修)

【江川】それはないですね。当社では、部署間の異動が比較的自由だからかもしれません。社員が特定の部署への異動を希望した時は、送り出す側に止める権利はなく、受け入れ側さえOKと言えば実現することになっています。ですから、例えば上司がスローキャリア志向の部下をスピーディーなラインに乗せようとしても、部下本人がそれを望まなければ、本人の意向に沿った業務に異動することもできるわけです。そうした選択は本人に権利があります。

また、男女限らず、人生の一時期だけ、例えば親の介護が落ち着くまでスローダウンしたいといった希望を出す人は少なくありません。もちろん、介護が終わったらまた復帰することもできます。その意味では、当社では職種も働き方も「選択制」と言えるでしょう。キャリア構築の主役は社員本人であり、会社としては社員一人ひとりが持てる力をいかに発揮できるようにするかが会社の成長に直結するのです。

でも、昔の当社にはそんな仕組みもなければ、スローなキャリアという概念すらありませんでした。「Up or Out(昇進か辞めるか)」という言葉が普通に使われていたぐらいです。