何を言っても否定されない安心感

「上司(吉田さん)には、何を言っても否定されないという安心感があるので、自分の頭で考える機会が増えていると思います」(稲富さん)

「私自身、これまで上司から自分の提案をないがしろにされた経験はありませんね。自分の提案がワークマンプラスや#ワークマン女子といった新しい業態に反映されていくことがむちゃくちゃ楽しくて、それが、仕事のやりがいの根幹になっています」(吉田さん)

まだ漠然とはしているが、ワークマンが時間的に社員を追い込まないことによって、社員をさまざまなストレスから解放していること、そして、社員同士が競い合うのではなく、尊重し合い補い合うことによって集団として高いパフォーマンスを発揮しているということも見えてきた。

しかし、なぜワークマンにそのようなことが可能なのか、そして、ワークマン方式は他の業種、業態でも可能なのかという疑問が残る。

後編では、2012年に三井物産からワークマンに移籍してワークマンの「しない経営」を一躍有名にした土屋哲雄専務に、この点を伺うことにしよう。

山田 清機(やまだ・せいき)
ノンフィクションライター

1963年、富山県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、鉄鋼メーカー、出版社勤務を経て独立。著書に『東京タクシードライバー』(朝日文庫)、『東京湾岸畸人伝』『寿町のひとびと』(ともに朝日新聞出版)などがある。