「自分の時代はこうだった」がいまだに根付いている

人は社会的な存在でありたいし、また自分が人生で得た知見を生かして誰かの役に立ちたいと思っています。

ところが今、若い世代に昔の話をしても、時代遅れの自慢話、時代が違ったから通用したやり方、時代錯誤の根性論と思われることが多く、どうかすれば老害扱いです。

動物は基本的には生殖機能がなくなれば寿命が尽きます。

ところが人間は、男性も女性も生殖機能を終えてからも長生きをします。これは歳を重ねることで得られる知見を年下に伝えたり、子育てに参加することで、より子孫を繁栄させやすくするためという説があります。

三世代同居が当たり前の時代であれば、おじいちゃん、おばあちゃんの役割は家族の中ではとても大切でした。ところが核家族化が進み、子育て情報などが充実してくると、親に子育てを頼らなくなります。

自己顕示欲が強く変化に疎い人は要注意

むしろ、昔ながらの子育ての間違いに気づいたり、時代遅れと一蹴する風潮さえもあります。となると、昔の子育て話をしても疎ましく思われるだけです。

自分達が作り上げてきた経験、知見を伝えたくても、伝えるチャンスに恵まれません。

自分が若かった頃は先輩を大事にし、アドバイスを聞いてきたのに、自分がいざその立場になったら、お払い箱のように扱われる始末です。

そこで「自分には自分の人生がある。マイペースでいこう」と思える人もいれば、認められない悔しさから、より認めて欲しいと行動に移す人もいます。

そうした人は自己顕示欲の強い人ですから、認められない、受け入れられないことで人と揉めることがあるのは想像に難くありません。

自己顕示欲の強い人にとって、自分の存在が小さくなることは許せず、怒りを持つ大きな理由になるのです。

安藤 俊介(あんどう・しゅんすけ)
日本アンガーマネジメント協会代表理事

アンガーマネジメントコンサルタント。怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニング「アンガーマネジメント」の日本の第一人者。ナショナルアンガーマネジメント協会では15名しか選ばれていない最高ランクのトレーニングプロフェッショナルにアジア人としてただ一人選ばれている。主な著書に『アンガーマネジメント入門』(朝日新聞出版)、『あなたのまわりの怒っている人図鑑』(飛鳥新社)、『私は正しい その正義感が怒りにつながる』(産業編集センター)等がある。著作はアメリカ、中国、台湾、韓国、タイ、ベトナムでも翻訳され累計65万部を超える。