高齢者が怒りっぽくなる個人的な理由③“自己顕示欲”
そして「自己顕示欲」です。自己顕示欲は承認欲求の一つとして考えられています。自己顕示欲に明確な定義はありませんが、あえて定義するなら「自分のことを認めて欲しいがあまり、周りに対して、やや過剰とも思える自己主張をすること」です。
さらには自己主張するだけでなく「何かしらの行動を起こし、その見返りを欲しがること」です。
先程の「孤独感」とこの「自己顕示欲」はコインの裏表のような関係です。孤独感が強いから自己顕示欲により誰かに受け入れて欲しいと行動するとも言えますし、自己顕示欲が強いから周りから煙たがられ孤独感を強めているとも言えます。
孤独感の強い人にとって無視はとても怖いことと書きましたが、自己顕示欲の強い人にとっても怖いのは無関心の対象になることです。自分に関心を持って欲しいがために、必要のないことにまで首をつっこんだり、口出ししたりします。
誰でも誰かの役に立ちたいと思っていますし、いつまでも自分が必要な人でいたいと願っています。
“定年退職”や“免許返納” 社会的役割を失う恐怖
一般的に言えば、歳をとっていけば、それまで担っていた社会的な役割から外れることが多くなります。
会社の中にいれば役職定年があります。もう少し歳をとれば定年がやってきます。今は定年までいられるかもわからず、50歳ともなれば早期退職の対象になることも珍しくはありません。
今まで自分こそは会社の中で役に立つ存在、社会的にも認められる存在と思っていたところに厳しい現実を突きつけられます。
今はかなりの年齢まで肉体的には元気でいられるので、これまでと何ら変わらない働きができるはずなのに、役割を外されることに憤りを感じます。まだまだ若い世代には負けないという自負もありますし、その自分を役割から外すという仕組みに怒りを感じます。
社会的な役割を失うことへの怒りは高齢者の免許返納問題にも見ることができます。近年、高齢者による自動車事故が社会問題化していることもあり、免許の自主返納について警察庁はじめ啓発活動を行っていますが、なかなかそう簡単にはいきません。家族も高齢の親を説得し、なんとか免許の返納を促そうとしますが頑として譲りません。
免許を自主返納することで公的身分証明書として使える運転経歴証明書を交付してもらう制度やメリットなどを訴えますが、そうしたメリットでは補えないものがあります。
公共交通機関の発達していない田舎であれば物理的に難しいという理由もありますが、それ以上に社会的な立場を失うことへの疎外感、抵抗感の方が圧倒的に強いと言えるでしょう。