多様な意見を聞ける「リモートワーク」で組織の成長を促進

それから、宮野さんがマネジメントで心がけるようになったのは、自分自身が未来を見据えること。こういう組織になりたい、こんなビジネスを展開したいというビジョンを積極的にメンバーに伝えるようになった。それと同時に「クイック・ウィン」、小さな成功実績を積みあげていくことで組織としての自信をつけながら、メンバーが成長していけるチャンスを与えるように努めているそうだ。

宮野さんが快適に整えたという在宅デスク
写真=宮野さん提供
宮野さんが快適に整えたという在宅デスク

気づけば、管理職になって2年が過ぎた。その間にはコロナ禍でビジネスもさまざまな変革を求められている。他の企業からはリモートワークの難しさをよく聞くが、コロナ以前から導入し、そのメリットを熟知する宮野さんはこう語る。

「リモートワークは、コミュニケーションスキルが身につく良さがあります。対面のミーティングではキャラクターが強い人や声の大きい人に引っ張られがちですが、リモートでは一人ひとりにフォーカスすることで多様な意見を聞けます。組織の中にはいろんな年代の人たちがいて、コミュニケーションツールも変わってきている。電話、メール、チャットとそれぞれに適したツールを使いわけることで、コミュニケーションを円滑にするスキルも身につくのではないかと思います。ただ気を付けているのはゴールの擦り合わせ。例えば『今日中に提出』という今日中の定義も、リモートワークだと、人によっては終業時間なのか、24時なのか明朝9時なのかズレが生じやすいので、『○時までに』とゴールとその時間にほしい理由を明確に伝えるようにしていますね」

ストレスを感じやすい日々の中で宮野さんが大切にしているのは、家庭でのコミュニケーションだ。休職のつらさを支えてくれた彼とは復職後に結婚。一日の終わりにその日の出来事や考えたことをシェアすることで、気持ちを落ち着かせて眠りにつくことができる。

もうひとつのリラックス法は、今も大好きなNBAのボストン・セルティックスの試合を観ることだという。毎年、アメリカへ観戦に行っていたけれど、コロナ禍ではかなわない。それでもコートサイドの席に座りたいという高校生からの夢は変わらず、「今もそれがモチベーションですね」とほほ笑む宮野さん。その夢にも少しずつ近づいているそうだ。

文=歌代幸子

歌代 幸子(うたしろ・ゆきこ)
ノンフィクションライター

1964年新潟県生まれ。学習院大学卒業後、出版社の編集者を経て、ノンフィクションライターに。スポーツ、人物ルポルタ―ジュ、事件取材など幅広く執筆活動を行っている。著書に、『音羽「お受験」殺人』、『精子提供―父親を知らない子どもたち』、『一冊の本をあなたに―3・11絵本プロジェクトいわての物語』、『慶應幼稚舎の流儀』、『100歳の秘訣』、『鏡の中のいわさきちひろ』など。